「早く帰らなきゃ。」

「あぁ、私はどこからこうなったんだろ」

 悔し涙が止まらない。
 何も悪いことしてないのに。
 普通の女の子より背が伸びた。ただそれだけなのに……。

 戻った先には地元では見ない、スーツ姿の男性が3人いた。
 3人とも端正な顔立ちで多少面食いの自覚のある夏都はしばし3人に見とれていた。

「かっこいいなー。多分私ではなくマリ姉ちゃんを嫁にしたいとかだろうなー。」

 どこか寂しげに考え事をして家の中に入った。
 先刻のスーツ姿の男性のうちのひとりは夏都と目があい、優しげな微笑みを浮かべる。

 金色の瞳がとても綺麗で見とれてしまう。

「あらまー遠路はるばるお越しいただきありがとうございます。誰を嫁にしたいのですか?」
 祖母の媚びるような声が台所まで響く。
 ほんとうに不快だ。

「あの3人はなつを嫁に貰いに来たりして」
 お手伝いのおばさんは笑いながら茶化す。
「もう、おばちゃんそんな訳ないでしょ!」
 そのおばさんは夏都にとっては心許せる数少ない相手だった。

「わからんよー?なつは美人だからきっとその噂を聞き付けたのかもよー」

 ※※※※※
「今なんと?」
「聞こえませんでしたか?夏都さんを私たち兄弟の共有花嫁として引き取りたいと申し上げました。」
「あんな背だけ無駄に高い、電信柱を!?」

 その言葉に男はピクリとこめかみを動かす。

「そうですか。あなたはあの子を手離したくないと。しかも都合のいいストレスのはけ口として手元に置いときたいのが本音ですか?」

 図星だったのか祖母はうぐっと言葉を失った。
 どとめにチクリと。
「その女として魅力のない電信柱を嫁に貰うと言ってるんです。感謝して欲しいくらいです。」
 両横にいた男二人は怒りで唇をかみ締めて俯いていた。
 そして……。

「ここに結納金3000万あります。それでも足りないのならこれの倍出しても構いません。」

「あーもう!好きにしろ!夏都!夏都!お前を引き取りたいと言ってる男たちが来たよ!」

 祖母は乱暴に夏都の腕を引っ張り3人の元に突き出した。
 間一髪のところで先程目が合った金色の目をした男が夏都を受け止めた。

「大丈夫かい?お嬢さん。」

「あんた、自分が何やったのか分かってんのか?!」
 紫色の瞳をした少年は怒りをあらわにした。
 祖母に殴りかかろうとした時に中心に座ってた男が制した。