「あの……」
 「大丈夫だよ。最後まではしていないから。」
 「そっか……」
 「残念そうな顔しないで。大丈夫だよ。まだ君は若いんだから。」
 「うん……」

 そのままふたりは抱き合って二度寝をした。
 正明のぬくもりで夏都も夢の中に……。

 目が覚めたとき、シャニはいつの間にかふたりの間に割り込んで寝ていた。
 夏都は優しく微笑んでシャニをゆっくり撫でる。

 『まま……』
 シャニは寝ぼけ眼になりながら、夏都を恋しがる。
 隣で正明は未だに寝たままだった。

 「そろそろ御飯作らないと……」
 
 夏都は服を着て、そのまま台所に消えた。

 ――――――――――
 6日目の朝。
 正明と過ごす1週間も残すところあと1日。
 終わってしまうと泰明のところへ行くことになる。
 共有花嫁の運命とはいえ……。
 夏都は泰明のことがけして嫌いというわけではない。
 
 「なつちゃんは泰明のこと苦手か?」
 「うん。でも誤解しないで。泰兄ちゃんのこと嫌いという訳では無いの。」
 「そか。でもわかっているよ。あいつ俺でも何考えているかわからないからね。」

 余計に夏都も不安になる。

 「大丈夫だよ。泰明はいいやつだから。」
 
 正明は笑顔を向けながら夏都の頭を撫でる。
 
 「うん……あと一週間正にいちゃんと過ごしたいよ……」
 「俺もそうしたいのは山々だけど、あまり待たせると泰明が可愛そうだよ。」

 正明は夏都をなんとかなだめている。

 「わかっているよー。」
 「あんまり拒否すると泰明がかわいそうだよ。」

 そんなやり取りを続けていく中、正明と過ごす1週間の最終日を迎えた。


 「なつちゃん、そんな浮かない顔しないで。また2週間後にふたりで過ごせるからね。」
 「うん」
 「俺、なつちゃんの笑った顔が好きだな。大丈夫だよ。泰明はなつちゃんとすごせること楽しみにしていたから。」

 泰明は夏都にベタ惚れだ。
 きっと準備をしているだろう。

 「明日、泰明が迎えに来るから荷造りして待っていればいいから。」
 「うん。」
 「あいつはなつちゃんに嫌なことは絶対にしないから……多分」
 「多分……か。余計不安だよ。」

 夏都はもたつきながらも荷造りをしている。

 『ママーあいつがなんかしてきたら俺が猫パンチ御見舞するから安心して!』
 「ありがとう。シャニ。あなたは私のナイトだね」
 『えへへー』

 シャニは夏都に頬ずりをされながら嬉しそうに目を細めた。

 ――――――
 そして、最終日の朝。
 朝食を食べてしばらくしたとき、チャイムが鳴る。

 「泰明か?」
 『そうだよ、なつちゃんを迎えに来たよ。』
 「いくらなんでもまだ7時だぞ?近くのカフェで時間つぶしとけ。」
 『わーたよ。』

 泰明は不満そうな声を最後にインターフォンが途切れた。

「泰兄ちゃん、もう来てたの?」
『あいつママが絡むとやること早いな。』
「まあ、そう言うな。泰明もそれだけなつちゃんのことが好きなんだよ。」
『とか言って、まさあきもママとお楽しみだったみたいだな。裸で抱き合ってよー』
 
 「えっ?」って顔をするふたりに対しシャニは『俺が何も知らないと思った?』と言わんばかりだ。
 正明はシャニに好物であるまぐろ味のチュールを見せた。