「カズくん……」
 「考え事してるみたいやけど、よかったら話きくで?」

 一旦買い物を中断しフードコートに場所を移した。

「実は、正にいちゃんのことで……」
「なんや?早速正明くんと喧嘩したん?」

 和貴の問に夏都は首を横に振る。

「じゃあ、何や?」
「正兄ちゃんがわからない。私のことが好きなのか、嫌いなのか……」
「あー……正明くんは長男のサガかはわからへんんけど本音を言わへんからな。まぁ俺も長男だからあの人の気持ちはわからんことあらへんけどな。」
「そうなの?」
「せやで。これだけは言える。正明くんたちも嫌いやっったらなーちゃんを共有花嫁として迎えへんで。」
 「うん……それは……そうだけど……」

 和貴は夏都の背中をポンポン叩く。

 「そんな浮かない顔をしたらあかんで?正明くん達不安がるで?」
 「うん……」
 「なぁちゃん自身が不安……なんやろ?」
 「!?」
 「そういう感じや。顔に書いてあるで?」
 「……」
 「目は口ほどにものを言うというのはほんまやな。せやったら思い切り正明くんたちに真正面からぶつかてみ?だいぶ違ってくると思うで。」

 親のように背中を押してくれる和貴の言葉に夏都は涙がボロボロ出た。
 なにか緊張の糸が切れた。
 本当は両親にやってほしかったこと。

 「ありがとう。頑張ってみる」

 「頑張れや」と和貴は笑顔で夏都に手を振った。

 正明のアパートに戻り、すぐに夕飯の準備をする。
 明るく鼻歌を歌う夏都は食事の準備をし続けた。

 『マサアキーママやけに機嫌いいよな』
 「そうだね。でも来たときよりだいぶ明るくなったから安心したよ」

 正明の笑顔はどこか能面を貼り付けたような笑顔だ