エレベーターやロビーもきれいなものだ。
 正明の部屋までたどり着くと、呼び鈴を鳴らした。
 
 ドアが開くと正明が顔を出す。

 「やあ、なつちゃん待っていたよ。これから1週間よろしくね」
 
 正明は夏都に優しくほほえみかけた。

 「うん。」
 『ママ、目がハートになってるよ。』
 「え?!うそ」
 『しっかりしてよ。共有花嫁も大事な役割だからね』

 シャニは呆れた口調で、夏都を諭した。

 「さ、上がって。汚いけど。」

 謙遜だろう。
 片付いたリビングに、2部屋あり、バス・トイレ別の内装もきれいな一室だ。

 1日目は、正明の好意に甘えた上でゆっくり休むことにした。
 自分やシャニのためにフカフカの寝床とキャットタワーを用意してくれた。

 「今日は移動で疲れたでしょ?出前でも取ろうか。」
 「え!?ご飯とか作らなくて大丈夫?」
 「うんいいよ。1日くらいは出前を使お?なつちゃんはお寿司好き?」
 「大好き!」

 「シャニ」
 『何だよ!』
 
 シャニは正明に嫉妬してるのだろう、尻尾を上下にムチのように床に叩きつけている。
 
 「お前は刺し身とか食べられそうか?」
 『刺し身……俺はプレミアム猫缶がいい。でも食ってみたい。』
 「わかった。決まりだな。」

 正明は1次反抗期の子どもをあしらうように笑った。
 流石は長男、お兄ちゃんだ。