「あぁ、まさくん?」
「2人ともまたこんなの見てたのか?そんなに鏡に映ってるあの子が心配か?」

 2人とも正明の問に頷く。
 正明も鏡の向こうの少女、夏都が気になっていた。
 実の娘にここまで酷いことをする輩もいるのか。信じられない光景。

「父さん、母さん、俺から提案があるんだけどいいかな?」

 ふたりは正明の言葉に頷く。

 話し終えた後、泰明と宏明を呼び出す。
 2人も鏡の向こうの夏都を見つめ怒りをあらわにした。

「これって、実の娘にすることなの?」
 宏明は開口一番に自分自身の疑問をぶつけた。
 泰明は怒りで唇を噛み締めた。
「この子は絶対に守る。俺の花嫁にして守りたいくらいだよ。」

「父さん、なんでこの子は親から家政婦以下の扱いを受けてるの?」

「そこまでは分からない。これから探偵を雇って調べるつもりだ。」

 正明の問いに明は首を横に振る。

 翌日、明は早速探偵を雇い小山家のことについて徹底的に調べた。
 調べれば調べるほど夏都の父親や祖母の悪行がボロボロ出てきた。殺意を覚えるほどの内容だった。

 調査結果としては「長女の夏都は背が伸びすぎて嫁に出せないと結論を出し奴隷のようにこき使われた」との事だ。

 和泉もこれには怒り心頭だ。

「それだけの事で私の娘を家政婦扱いですって!?信じられない!!正明たちを行かせるんじゃなくて私が殴り込みに行きたいくらいよ!」

「母さん、落ち着いてと言っても無理か。」
 正明は怒りを露にした和泉から冷静な明の方に視線を向ける。
「父さん、俺らに任せて貰えないかな?さっき話した共有花嫁って形であの子を迎えに行くって話……」
「そうだね。やむを得ないと思うよ。申し訳ないけどお願いして大丈夫?」

「はい。父さん。」
 3人の緩みを知らない声が親子の信頼を物語っている。

 ※※※※
 季節は冬に変わる頃、夏都の白魚のような手にひび割れが目立つようになった。
 それでも洗い物をしないといけないから痛みを堪えながらやってくしかない。

 近所のヒソヒソする声が耳に突き刺さる。

「あの子よ。酷いわよね。あんな可愛い孫を家政婦のように扱って」
「なんでもそこのおばあさんが背の高い女性は嫌われるという古い考え方を捨てられないらしいわよ。」

 その噂をする夫人たちは夏都のことを面白半分に噂していた。