「俺そろそろ行くから。なつちゃん、いつも弁当ありがとう。」

 正明は家を後にする。

「泰兄ちゃんと宏兄ちゃんは学校や仕事は大丈夫なの?」
 
 二人ともその言葉に「やべ」といわんばかりにそれぞれ自分の弁当をもって出かける。

 夏都は静かになったリビングのソファーに座り込んだ。
 
「共有花嫁って思ったより大変だなぁ……でもいい人たちでよかった。」

『ママー大丈夫?』

 シャニはご飯を食べ終わり、夏都に近づいてきた。

「大丈夫だよーシャニくん、おいで」

『うん』
 シャニは夏都の胸に飛び込むと『ままー』とふみふみしだした。
 泰明が見ると絶対怒る光景だろうと安易に想像がつく。

 それ抜きでも猫のふみふみはすごく可愛い。
 この子が守り猫になってくれるのだから不思議なものだ。

「シャニ……」
『なーに?まま』
 夏都はシャニの頭を撫でながら「私のところに来てくれてありがとうねー」と優しく囁いた。
 シャニのゴロゴロ喉を鳴らす音に癒されつつある。

 過去の仕打ちもどうでも良くなる気がした。
 夫たちは優しいし、猫も可愛い。
 でも、いつかは夫たちのどちらかの子どもを産まないといけない。