「ううん。俺が悪かったよ。猫に嫉妬してしまったよ。」

 夏都は泰明を無言で抱きしめる。

「なつちゃん……俺、子どものころから君が好きだったんだ。」

 夏都は突然の告白に戸惑う。
 
 心の中での葛藤を持ってしまう。

 ――泰兄ちゃんのことは好きだけど……。
 それが恋愛感情かわからない。
 でも正兄ちゃんのことは一目ぼれだ。

 本当にわからない。どうしたらいいの?
 大事な恩人のひとり。
 だから無下にすることもできない。

 答えは?今は返事をする時でないと思った。

「泰兄ちゃん、ごめんね。考えさせて……」
 
 泰明はさみし気に「うん」とだけ返事をした。

 いきなり告白するのは早すぎたかと思いながらベランダに移動する。
 窓越しから、愛おしい人を見つめる梅雨の始まりかけのころだった。

 ――煙草をふかしながら思い人のことを考えてしまう。

 第2章 完。