『ママー怖かったよー』

 シャニは目をウルウルだった。
 夏都が「よし、よし」と抱きしめたまま頭を撫でる。
 
 シャニはまだ夏都の腕の中で、ゴロゴロ喉を鳴らしてる。

 玄関から「ガチャリ」という音が響いた。

 「ただいまー」
 リビングに、正明と泰明が顔を出した。

「よっ、正明くん、泰明くんしばらくぶりやな」

「おっ、和貴、元気してたか?」
 正明は、ぱあと明るい顔になった。

『何だ?こいつら……』
 シャニは、正明と泰明を見ると夏都の服に爪を立てる。
 和貴の先ほどのジョークを真に受けているのだろう。

「佐木さんがあんな冗談を言うから、シャニ怯えてるじゃないですか」
「すまん、すまん」
 和貴は笑いながら、謝る。

 正明と泰明は終始「?」って顔だった。

 正明はすかさず「どういう状況?」と確認する。

「実は……」夏都は言葉を濁すように事情を話す。

「和貴?」
「ごめん。少しからかっただけだけやねん……」
 和貴は正明から目をそらす。
 正明を見ると口元だけは笑っているが目は完全に笑ってなかった。

「アニキ、最近海外の知り合いの伝手で、猛毒ムカデを取り寄せたんだ。」
「さすがにそれはまずいからしまいなさい。」
 
 正明はムカデを素手で掴んでる泰明を制す。