一見のどかな家族に見えるがひとりだけみすぼらしい姿の少女がいた。
 まるで家政婦以下だ。
 彼女は小山夏都(こやま なつ)。
 目鼻立ちはくっきりした美少女ではあるが背が伸びすぎて嫁に出せないという理由で奴隷のような毎日を送らされてる。
 父親もマザコンであるため祖母に逆らうことが出来ない。

 夏都が家事をしてる最中にテレビで「共有花嫁制度」についてのニュースが流れた。

「私には関係ないよね。こんなに背が伸びてしまったのだから」
 悔しさのあまり涙がこぼれてた。
 覚悟はしてたけどここまでひどい仕打ちを受けるとは夢にも思ってなかった。

 毎日5時に起きて、夜は3時に寝ればいい方だった。
 早く起きて朝食を作り祖母や両親、妹たちを起こすのが夏都のルーティンになってた。
 ヘトヘトになろとも空腹で喘ごうが休む暇もなく働かされてた。

 そんな中、母の春奈が作ってくれた昆布と梅、ひき肉入のおにぎりが彼女の支えだった。

「お母さん、ありがとう。」
 それを泣きながら頬張った。

「夏都ごめんね。お母さんにはこれしか出来ないの。おばあちゃんに見つからないうちに食べてしまいなさい。」

 母親は悔し涙を浮かべながら夏都の頭を撫でる。母親は悪くないのに。

 祖母からの暴言や暴力を見てるだけの父親は大嫌い。
 みんな嫌いだと思うこともある。

「夏都!」
 祖母の怒鳴るような声。
 この祖母は夏都に辛く当たり続けた。
 木の定規や棒で殴り続けた。
 首から下はアザだらけだった。

 祖母はわるびれる様子もなく「どうせお前は嫁に行けないんだからそれくらいいいだろ」と嘲笑う。

 ※※※※※※
「あぁ、私の娘に酷いことしないで!!」
「和泉、落ち着きなさい!僕も辛いんだよ。」

 魔境越しに2人とも悔し涙を浮かべながら夏都を見つめてた。

「やっと、娘の生まれ変わりを見つけることが出来たのにこんなのあんまりよ」
 和泉と呼ばれた女性はわんわん泣いていた。
 夫の方も和泉の背中をさすって、何とかなだめてる。

「明さん、どうしたら……」
「今、考えてる。」

 その時「父さん、母さん」と二人を呼ぶ声が聞こえた。