「泰兄ちゃんが何か言っていたんですか?」
 「特になんも言うてへん。」
 
 和貴はあっけらかんと言葉を放った。
 「しいて言うなら」と話している途中で宏明が帰ってきた。

 「たでーま。」

 宏明の声に和貴は茶化すように「おっ旦那様の一人が帰ってきたで?」と笑う。

「あれ?和貴じゃん。どうしたの?」
「あぁ、花嫁さんに、守り猫をプレゼントしに来ただけや。と言っても泰明くんやないかって、ヒヤヒヤしたわー」
「なんでそうなるんだよ。」

 宏明は「なんじゃそりゃ」と言わんばかりにため息をつく。

 さっきまでの真剣表情から、打って変わり宏明の前では冗談を言う関西の優しいお兄さんとなっている。

 つかみどころはないけど、裏表のない優しい人。
 それが夏都の和貴に対する第一印象だった。

「まぁ、俺もこの若さで一生を終えたくないわ。誤解せんといてや。」

「大丈夫。和貴の年上好きなの、筋金入りなのは俺もわかっている。」

「おおきに。持つべきものは理解のある親友やな」

 和貴はケラケラ笑いながらおちゃらける。
 夏都は、そんな二人を見ながら子猫に話しかける。

 「あなたを連れてきた人いい人みたいだね。守り猫……というけどあなたのことちゃんと守るから安心してうちの子になるんだよ。」

 子猫は夏都に抱かれた状態の寝ぼけ眼で「ナーン」と鳴いた。

 夏都はひらめいたような顔をし、二人に、提案を持ち掛けた。

「宏兄ちゃん、佐木さん。」

 宏明と和貴は、夏都が呼びかけに「ん?」と返事した。