「中には、鬼が自分らを裏切った花嫁を喰らった事例もあるんや。大切な友だちに花嫁殺しの汚名を着せたくないんや。」
 
「はい。私の夫たちである以前に命の恩人です。肝に銘じます。」

 和貴はほっとしたような顔をした。

「おおきに。君ならそうゆうてくれる思ってた。おおきに……」

 泣きながらお礼の言葉をつづる和貴の姿に夏都は後戻りができないと悟った。
 正確には後戻りはする気なしといったところだ。
 どんな形でも自分を愛してくれる夫たち。
 娘のようにかわいがってくれる義両親。昔の自分が望めるものではない。この上もない贅沢だ。

 子猫も、夏都の言葉をきき安心しまた眠りにつく。

 和貴は鼻をすすりながら夏都を見守ると心に決めた。

「聞きたいことがあんねん。ええか?」
「あ、はい。」
「泰明くんのことどう思ってるん?」

 突然の和貴の問に夏都は「えっ?」ってなる。

「なんで泰兄ちゃんが出てくるんですか?」
「素朴な疑問。世間話やから気にせんといてや。」

 和貴の意味深な問いに夏都は、何とも言えない気持ちになる。きっとこの人は何かを知っていると。