次の日。わたしは朝起きた瞬間からなんだか胸がドキドキして落ち着かなかった。
昨日の放課後、教室でやりとりしたみなみとの会話も気になっていたし、夕方ゆうくんに励まされた言葉もまだ頭に残っていたから。
なんだか今日は、あまり人に会いたくない気持ちがしたけれど、学校を休む勇気なんて自分にないので、わたしは普段通りお母さんに挨拶をして家を出てきた。
途中でいつものコンビニに立ち寄りホットココアを買うとお兄さんがいて「今日は少し元気そうでよかったです」って言われたけど、素直に「ありがとうございます」って返事をすることができて、ちょっとだけ笑みがこぼれた。
満員のバスにしばらく揺られて学校に着くと、誰とも目を合わせることもなくまっすぐ教室へと向かい、わたしはすぐに自分の席に座って本を開いた。
この前本屋さんに行った時に「おすすめNo,1」っていうポップが貼られていた、恋愛ものの長編小説。
自分の気持ちを相手に伝えることができずに片想いを続けている高校生のお話で、なんだかその境遇があまりにも自分に似ているからか、夢中になってずっと読んでしまっている。
今まで恋愛系とか青春系とかそういった小説は、あまりいい思い出のない学校生活を思い出させるからほとんど読んでこなかったけれど、ともやくんのことが気になりはじめてからは、なぜか自然とこういったジャンルを手に取るようになってしまった。
現実こんなにうまくわけないよ、って思ってしまうけれど、やっぱり憧れとか羨ましさとかそういった気持ちがないわけでもない。
学校でひとりで時間を潰すのには読書は最適だと思うし、なんといっても自分を空想の世界に連れて行って夢を与えてくれる。
だから、何時間本を読んでいても飽きることはないし、勉強をしなくてもいいなら一日中読んでおきたいっていつも思う。
「なに読んでるの?」
気配もなく聞こえてきた声に、わたしはドキッとして思わず本を閉じた。
机の上に置いていたしおりがヒラヒラと地面に落ちて、わたしは慌てて拾おうとしたけれど、ともやくんがそっとしゃがみ込んで先にしおりを手にとってしまった。
「それ、どんな本なの?」
ともやくんがわたしが手に持っている本をまじまじと見つめながら言った。
本に集中していたからか全然気がつかなかったけれど、ともやくんはいつからここに立っていたのだろう。
わたしは机の中に本を押し込んで、無意味に教室の壁にかかっている時計をチラリと見た。
こんな時にチャイムが鳴ってくれればいいのに・・・・・・。
「実はその本、俺も読んだよ。面白いよな。なんか切ない恋愛って感じで」
「え・・・・・・。う、うん」
ともやくんがしおりをわたしの机に置きながら、ちょっぴり悲しそうな口調で言った。
「なぁ、ゆりなにも好きな人っているの?」
わたしの心臓がドキッと大きく鳴り響いた。
そんなことをともやくんに聞かれるだなんて、全く思ってもいなかった。
だって、好きな人の話はともやくんとだけは絶対にやりたくないって思っていたから。
「い、いないよ。好きな人なんて。わたしにいるわけないじゃん」
わたしは顔が引きつっているのが自分でもわかった。
もしかしたら、声も口ごもっていたかもしれない。
だけど、だけど、わたしに好きな人がいるだなんて、自分ではどうしても認めたくなかった。
そんなことしたら、もっとともやくんのことばかり気になってしまいそうだって思ったし、ともやくんのことしか考えられなくなってしまいそうだったから。
「今日も放課後、図書室で頑張ろうな」
そう言ってともやくんはみんなの輪の中に消えていった。
こんなに近くにいるはずなのに、そばにいるはずなのに。
それなのに、わたしにとってはすごく遠い存在な気がして、絶対に手の届かないところにいるような気がして。
生きている世界がちがいすぎる自分のことが嫌になってしまうし、悔しくて仕方がない。
昨日の放課後、教室でやりとりしたみなみとの会話も気になっていたし、夕方ゆうくんに励まされた言葉もまだ頭に残っていたから。
なんだか今日は、あまり人に会いたくない気持ちがしたけれど、学校を休む勇気なんて自分にないので、わたしは普段通りお母さんに挨拶をして家を出てきた。
途中でいつものコンビニに立ち寄りホットココアを買うとお兄さんがいて「今日は少し元気そうでよかったです」って言われたけど、素直に「ありがとうございます」って返事をすることができて、ちょっとだけ笑みがこぼれた。
満員のバスにしばらく揺られて学校に着くと、誰とも目を合わせることもなくまっすぐ教室へと向かい、わたしはすぐに自分の席に座って本を開いた。
この前本屋さんに行った時に「おすすめNo,1」っていうポップが貼られていた、恋愛ものの長編小説。
自分の気持ちを相手に伝えることができずに片想いを続けている高校生のお話で、なんだかその境遇があまりにも自分に似ているからか、夢中になってずっと読んでしまっている。
今まで恋愛系とか青春系とかそういった小説は、あまりいい思い出のない学校生活を思い出させるからほとんど読んでこなかったけれど、ともやくんのことが気になりはじめてからは、なぜか自然とこういったジャンルを手に取るようになってしまった。
現実こんなにうまくわけないよ、って思ってしまうけれど、やっぱり憧れとか羨ましさとかそういった気持ちがないわけでもない。
学校でひとりで時間を潰すのには読書は最適だと思うし、なんといっても自分を空想の世界に連れて行って夢を与えてくれる。
だから、何時間本を読んでいても飽きることはないし、勉強をしなくてもいいなら一日中読んでおきたいっていつも思う。
「なに読んでるの?」
気配もなく聞こえてきた声に、わたしはドキッとして思わず本を閉じた。
机の上に置いていたしおりがヒラヒラと地面に落ちて、わたしは慌てて拾おうとしたけれど、ともやくんがそっとしゃがみ込んで先にしおりを手にとってしまった。
「それ、どんな本なの?」
ともやくんがわたしが手に持っている本をまじまじと見つめながら言った。
本に集中していたからか全然気がつかなかったけれど、ともやくんはいつからここに立っていたのだろう。
わたしは机の中に本を押し込んで、無意味に教室の壁にかかっている時計をチラリと見た。
こんな時にチャイムが鳴ってくれればいいのに・・・・・・。
「実はその本、俺も読んだよ。面白いよな。なんか切ない恋愛って感じで」
「え・・・・・・。う、うん」
ともやくんがしおりをわたしの机に置きながら、ちょっぴり悲しそうな口調で言った。
「なぁ、ゆりなにも好きな人っているの?」
わたしの心臓がドキッと大きく鳴り響いた。
そんなことをともやくんに聞かれるだなんて、全く思ってもいなかった。
だって、好きな人の話はともやくんとだけは絶対にやりたくないって思っていたから。
「い、いないよ。好きな人なんて。わたしにいるわけないじゃん」
わたしは顔が引きつっているのが自分でもわかった。
もしかしたら、声も口ごもっていたかもしれない。
だけど、だけど、わたしに好きな人がいるだなんて、自分ではどうしても認めたくなかった。
そんなことしたら、もっとともやくんのことばかり気になってしまいそうだって思ったし、ともやくんのことしか考えられなくなってしまいそうだったから。
「今日も放課後、図書室で頑張ろうな」
そう言ってともやくんはみんなの輪の中に消えていった。
こんなに近くにいるはずなのに、そばにいるはずなのに。
それなのに、わたしにとってはすごく遠い存在な気がして、絶対に手の届かないところにいるような気がして。
生きている世界がちがいすぎる自分のことが嫌になってしまうし、悔しくて仕方がない。