俺はゆりなを強引にでも引き止めるべきだったのだろうか。
きっとそうするべきだったのかもしれない。
クラスのやつらにあんな風に言われて、嫌な思いをしない人なんていないはずだし、本当はゆりなもすごく傷ついていたのだと思う。
だからいつもはおとなしいゆりなが教室から逃げ出して、非常階段なんかに駆け込んだんじゃないかって。
俺はゆりなの味方でありたかったし、そばにいてあげたかった。
たとえみんなが敵だったとしても、俺だけは違うんだっていうことをゆりなにわかってほしかった。
だけど・・・・・・。
結局俺は名前を呼ぶことくらいしかできなかったし、すぐにゆりなは目の前からいなくなってしまった。
俺もきっと悪口を言っているみんなと同罪なんだと思う。
話を聞いてあげるふりをして、友だちでいるふりをして、だけど実際は何もしてやることもしない、ただ単に見て見ぬ振りをする。
そういった俺が、1番タチの悪い存在なのかもしれない。
それじゃあ、今の自分には何をゆりなにしてあげられるのだろう・・・・・・。
足元に目をやるとゆりなの涙の跡が点々と残っていて、それ見ると自分の不甲斐なさが情けなく感じられてしまい、胸がギュッと締め付けられる。
俺は誰もいなくなり静まり返った非常階段をゆっくりと降りて、下を向いたまま教室へと戻った。
「おい、ともや。どこに行ってたんだよ? まだお前何をするか決めてないだろ」
「ともやくん、私たちのグループに一緒に入ってくれない?」
「ともや、聞いてるのかよ? ぼーっとするなよ」
教室のドアを開けた瞬間、俺が戻ってくるを待ち構えていたかのように、みんなが次々と声をかけてきた。
つい数分前に起こった出来事など、何もなかったかのように。
ゆりなという人物がこのクラスに存在しなかったかのように。
耳に入ってくる声は聞こえてはいるけれど、耳障りな雑音のようにしか思えなくて、思わず耳を塞いでしまい衝動にかられてしまう。
みんな大切な友だちだって思ってはいるけれど、心を許して関われるやつなんてひとりもいないし、本当の俺の気持ちなんて誰ひとりとして知らない。
ただ表面上の付き合いっていうだけ。
今の俺が本当に関わりたいって思っているのは、ゆりなだけ。
だけど、肝心なゆりなは俺には心を開いてくれないし、多分誰のことも信頼なんかしていないのかもしれない。
ひとり自分の殻の中に引きこもって、じっと時が過ぎ去るのを耐え続けているような気がする。
だからなんとかしてその殻から出してあげたいって思うけれど、今の俺にはどうしたらいいのかまったくわからない。
「俺、パズルする。ゆりなと一緒にやるよ」
自分の席に座った瞬間、俺の口からは自然とその言葉が出てきた。
ゆりなを助けたいからとか、可哀想だからとかではなくて、単純にみんなとガヤガヤするのは嫌だったし、自分の性格上黙々と作業するパズルの方が合っていると思ったから。
ただそれだけの理由。
「マジであいつとパズルなんかするのかよ。お前そんなキャラじゃないだろ?」
「そうかな? パズルって楽しくない? 俺、結構好きだけどな、パズル」
「ゆりななんかに同情したようなことしてると、あとで後悔するよ」
「ゆりなってひとりが好きなんだよ、絶対。だっていつもひとりでいるけど、特に何も思ってなさそうだし」
さっきまでみんなの話題は俺に対しての質問だったのに、いつの間にかクラス中がゆりなの悪口に変わっていって、自分が今まで心の奥底で押さえ込んでいた何かが大きく破裂した。
「お前ら勝手に決めつけるなよ。ゆりなが自分からひとりになりたいって言ってるところを見たことあるのかよ。好き放題言うのもいい加減にしろよな」
ざわめいていた教室がしんと静まり返り、みんなの視線が一斉に俺の方に向けられた。
驚きと、動揺と、困惑を隠しきれない表情を浮かべて。
「ともや落ち着けよ。どうしたんだよ急に。お前らしくないぞ」
隣の席に座っていたやつが俺をなだめるような口調で話しかけてきたけれど、俺の感情はたかぶったままでイライラする。
絶対にゆりなをひとりきりにはしたくない、嫌な気持ちにはさせたくない。
だけど今の俺にはどうしたらいいのかわからないし、ゆりなが何を思っているのかきちんと理解してあげることもできない。
唇を噛み締め、ギュッと拳を握り下を俯いたまま、ざわつくこの時間が過ぎ去るのをただひたすら待ち続けることしかできない自分が歯痒くて、情けない。
きっとそうするべきだったのかもしれない。
クラスのやつらにあんな風に言われて、嫌な思いをしない人なんていないはずだし、本当はゆりなもすごく傷ついていたのだと思う。
だからいつもはおとなしいゆりなが教室から逃げ出して、非常階段なんかに駆け込んだんじゃないかって。
俺はゆりなの味方でありたかったし、そばにいてあげたかった。
たとえみんなが敵だったとしても、俺だけは違うんだっていうことをゆりなにわかってほしかった。
だけど・・・・・・。
結局俺は名前を呼ぶことくらいしかできなかったし、すぐにゆりなは目の前からいなくなってしまった。
俺もきっと悪口を言っているみんなと同罪なんだと思う。
話を聞いてあげるふりをして、友だちでいるふりをして、だけど実際は何もしてやることもしない、ただ単に見て見ぬ振りをする。
そういった俺が、1番タチの悪い存在なのかもしれない。
それじゃあ、今の自分には何をゆりなにしてあげられるのだろう・・・・・・。
足元に目をやるとゆりなの涙の跡が点々と残っていて、それ見ると自分の不甲斐なさが情けなく感じられてしまい、胸がギュッと締め付けられる。
俺は誰もいなくなり静まり返った非常階段をゆっくりと降りて、下を向いたまま教室へと戻った。
「おい、ともや。どこに行ってたんだよ? まだお前何をするか決めてないだろ」
「ともやくん、私たちのグループに一緒に入ってくれない?」
「ともや、聞いてるのかよ? ぼーっとするなよ」
教室のドアを開けた瞬間、俺が戻ってくるを待ち構えていたかのように、みんなが次々と声をかけてきた。
つい数分前に起こった出来事など、何もなかったかのように。
ゆりなという人物がこのクラスに存在しなかったかのように。
耳に入ってくる声は聞こえてはいるけれど、耳障りな雑音のようにしか思えなくて、思わず耳を塞いでしまい衝動にかられてしまう。
みんな大切な友だちだって思ってはいるけれど、心を許して関われるやつなんてひとりもいないし、本当の俺の気持ちなんて誰ひとりとして知らない。
ただ表面上の付き合いっていうだけ。
今の俺が本当に関わりたいって思っているのは、ゆりなだけ。
だけど、肝心なゆりなは俺には心を開いてくれないし、多分誰のことも信頼なんかしていないのかもしれない。
ひとり自分の殻の中に引きこもって、じっと時が過ぎ去るのを耐え続けているような気がする。
だからなんとかしてその殻から出してあげたいって思うけれど、今の俺にはどうしたらいいのかまったくわからない。
「俺、パズルする。ゆりなと一緒にやるよ」
自分の席に座った瞬間、俺の口からは自然とその言葉が出てきた。
ゆりなを助けたいからとか、可哀想だからとかではなくて、単純にみんなとガヤガヤするのは嫌だったし、自分の性格上黙々と作業するパズルの方が合っていると思ったから。
ただそれだけの理由。
「マジであいつとパズルなんかするのかよ。お前そんなキャラじゃないだろ?」
「そうかな? パズルって楽しくない? 俺、結構好きだけどな、パズル」
「ゆりななんかに同情したようなことしてると、あとで後悔するよ」
「ゆりなってひとりが好きなんだよ、絶対。だっていつもひとりでいるけど、特に何も思ってなさそうだし」
さっきまでみんなの話題は俺に対しての質問だったのに、いつの間にかクラス中がゆりなの悪口に変わっていって、自分が今まで心の奥底で押さえ込んでいた何かが大きく破裂した。
「お前ら勝手に決めつけるなよ。ゆりなが自分からひとりになりたいって言ってるところを見たことあるのかよ。好き放題言うのもいい加減にしろよな」
ざわめいていた教室がしんと静まり返り、みんなの視線が一斉に俺の方に向けられた。
驚きと、動揺と、困惑を隠しきれない表情を浮かべて。
「ともや落ち着けよ。どうしたんだよ急に。お前らしくないぞ」
隣の席に座っていたやつが俺をなだめるような口調で話しかけてきたけれど、俺の感情はたかぶったままでイライラする。
絶対にゆりなをひとりきりにはしたくない、嫌な気持ちにはさせたくない。
だけど今の俺にはどうしたらいいのかわからないし、ゆりなが何を思っているのかきちんと理解してあげることもできない。
唇を噛み締め、ギュッと拳を握り下を俯いたまま、ざわつくこの時間が過ぎ去るのをただひたすら待ち続けることしかできない自分が歯痒くて、情けない。