昔からわたしは、自分のことが大嫌いだった。


みんなにとっては普通で当たり前のことがとても難しくて、なにもできなかったから。


友だちと一緒にカフェに行ったり、部活動に入ったり、放課後居残りをしておしゃべりをしたり。


そういった何気ない日常のことが、わたしにはできなくて。


学校から帰る途中にハンバーガーショップがあって、みんなが勉強をしている姿を横目に見たりはするけれど、羨ましいなって心の中で思うだけで、いつもそのまま前を通り過ぎるだけ。


公園でわたしと同じ高校生のカップルがベンチに座り、楽しそうにおしゃべりをしながら盛り上がっている光景を見ると、なんだか自分がとても惨めに感じられて泣きたくなってしまう。


部活動帰りの生徒の額から流れている汗だって、わたしにはすごく眩しすぎて真っ直ぐ見ることができない。


みんなにとっての当たり前の日常というものは、わたしにとっては特別で、尊くて、そしてとても輝いていて。


だけど、わたしには絶対に手の届かないところにあるっていうことが自分でもわかっている。


きっとみんなはそのことに気がついていないのだろうな。


だってそれはみんなにとってあまりにも普通過ぎることだし、何も頑張らなくても簡単に手に入ってしまうものだから。


もちろんわたしだって楽しく毎日を送りたいし、笑って過ごしていたいと心の底から願ってはいる。


だけど、一度「普通」という線路からはみ出してしまったわたしが元の道に戻るのは簡単なことではなくて、いつの間にかどんどんと脱線してしまい、暗闇の中に突き進んでいってしまう。


どうにかしないと、変わらないとってはいつも思っているから、自分なりには一生懸命頑張っているつもりだけれど、頑張れば頑張るほど空回りしているような気がして、もう自分ではどうしようもなくなっている。


「もし生まれ変わることができたら、みんなみたいに普通になれますように」って一体今まで何回神さまにお願いしただろう。


こんなにも毎日悩み続けている高校生なんて、わたし以外にいるのかなって疑問に思ってしまうくらい。


きっと他の人は勉強や部活動、あとは彼氏や彼女のこと。


そういった健全なことで悩んだり、考えたりするのだと思う。


だけど、わたしは「毎日をどうやったら普通に過ごせるのだろう」って、きっとみんなが悩まないようなことを本気で悩んでいる。


毎晩寝る前に、同じことをベッドの上でぐるぐると考えていると、自然と涙がこぼれ落ちてきて、明日を生きる自信さえなくなってきてしまう。


学校になんか行きたくないし、朝なんて来なければいいのに・・・・・・。


だけどわたしには学校をサボる勇気もなければ、不登校になる度胸すらない。


学校を休める人はきっと特別なんだろうなって思う。


だって、自分にはそれだけの強い意志さえないのだから・・・・・・。


嫌だ嫌だ、と言いながらも必死で学校にしがみついているわたしは、一体これからどうなってしまうのだろう。


不安と恐怖と、焦りと孤独で胸が張り裂けそうになってしまうのを必死で堪えて、目をギュッと瞑ってこの世界から逃げることしかできない。


現実が全て夢だったらいいのにって思うわたしは、もしかしたらただ弱い人間なのかもしれない。




普通になりたい。


みんなみたいになりたい。



そう願いながらわたしは、とろんとした眠りの中に落ちていき、深い夢の世界へと迷い込んでいく。