「追ってきたか……なるほど、あの女の術は俺たちを空中にとどめるためのものだったか」
ノークが鼻を鳴らす。
「爆裂系の技は村に被害が出るかもしれないからな……ひたすら遠い場所まで吹き飛ばしてやる」
俺は『力』を集中した。
とにかく、できるだけ奴らを村から遠ざける。
いくら竜魔法の威力が絶大でも……いや絶大だからこそ、攻撃する場所は慎重に選ばなきゃいけない。
強すぎる力は、けっして万能じゃないってことだ。
だからこそ、
「来い――」
呼び出す。
自分の力の精髄。
その一つを。
「【竜翼盾】」
俺の左腕に小型の盾が装着された。
ヴ……ンッ。
盾の端から光があふれ、『光の盾』が形成される。
「なんだ? 盾なんかで俺たちと戦おうってのか? あ?」
大男の魔族がすごむ。
「なら、盾ごと切り裂いてやろう」
青年魔族が剣を抜いた。
かなりの威力を持つ魔剣だということが、見ただけで分かる。
「だけど――関係ないんだ」
俺は彼らに向かって盾をかざした。
「全部吹き飛ばすからな!」
ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ……!
盾が輝き、竜巻が召喚された。
「な、なんだと――!?」
「天候操作!? 人間ごときが、そんな超魔法を――」
二人の魔族が驚きの声を上げた。
天まで届く超巨大竜巻は、単にすさまじい風をまき散らしているだけじゃない。
ばりっ、ばりばりっ……!
なんと空間自体を砕き、割っていた。
あちこちに生じた空間の亀裂が周囲のものを見境なく吸い込む。
「うわ……爆裂系とは違う意味でまずいな、これ……」
さすがは魔竜王の魔法。
俺が思った以上にとんでもない威力らしい。
……っていうか魔法の説明のところを読んでから発動したんだけど、『空間が裂けます』なんて書いてなかったぞ……?
その辺りまで含めて書いておいてほしいもんだ。
……なんて文句を言っても始まらない。
「このまま次元の狭間に消えろ!」
俺は竜巻を魔族たちに向けて動かした。
そう、この竜巻は俺の意志によってある程度移動するのだ。
さすがに自由自在に軽々と動かせるわけじゃないけど――。
魔族たちに向けてぶつけるくらいはできる。
「お、おのれ……っ!」
二人の魔族はすぐさま竜巻に向けて、ありったけの魔力弾を放った。
が、びくともしない。
それくらいじゃ吹き飛ばすことも、破壊することもできない。
「なら、これで――」
今度はノークが魔剣を振るう。
黒い斬撃波が竜巻にぶつかり――それだけだった。
「天使を百体単位で切り裂く、この魔剣が……通じないだと……!?」
驚愕の声を上げるノーク。
それから、すぐにその表情に冷静さが戻り、
「――逃げるぞ」
冷たい声で告げる。
「ハア? 人間ごときを相手に逃げるってのかよ!」
ヴァルガスが反対した。
ノークとは対照的に、こっちは感情をむき出しにしている。
人間を見下す感情を――むき出しにしている。
「くだらないプライドにとらわれるな。戦況を冷静に判断しろ」
「うるせえ!」
言い争いを始める二人。
が、
「もう遅い」
俺は二人に言い放った。
「加速しろ、竜巻」
俺は竜巻に命じる。
さらに速度が増し、彼らは空間の割れ目――次元の裂け目へと吸い込まれていく。
「ぬおおあああああああああああああああああああああっ……!?」
ヴァルガスは呆気なく次元の裂け目に消えていった。
そして、
「ぐっ、おのれ……」
ノークの方は次元の狭間から出てこようとしていた。
こいつの方がヴァルガスよりも、かなり強いんだろう。
魔力を全開にして次元の裂け目の吸引力に抗い、無理やり出てくるつもりだ。
このままだと、こっち側に完全に戻ってくるな……。
押しこむしかない――。
「……この技、竜っぽいから使いたくないけど」
きっと、ただでさえプリムが俺を怪しんでいるのに、決定打になってしまうだろう。
けれど、ノークをこっちの世界に舞い戻らせてはいけない。
やるしかない――。
「おおおおおっ、【竜咆弾】!」
俺の背後に竜の形をしたオーラが浮かび上がった。
その口が開き、巨大なエネルギー弾が放たれる。
「な、なんだとぉぉぉぉぉぉっ……!?」
ノークはエネルギー弾に押し返され、今度こそ次元の狭間に消えていった。
「ふう……」
俺はやっと一息をついた。
それからおそるおそるプリムの方を振り返る。
「魔竜王の、力――」
あっさりバレた。
「もしかしたら、魔王以上の……脅威かも」
震えながら俺を見つめている。
いや、にらんでいる。
あ、『魔王以上にヤバい奴』扱いされちゃってるよね、これ……。
魔族は撃退したものの、今度はプリムの対応に追われそうだ――。
ノークが鼻を鳴らす。
「爆裂系の技は村に被害が出るかもしれないからな……ひたすら遠い場所まで吹き飛ばしてやる」
俺は『力』を集中した。
とにかく、できるだけ奴らを村から遠ざける。
いくら竜魔法の威力が絶大でも……いや絶大だからこそ、攻撃する場所は慎重に選ばなきゃいけない。
強すぎる力は、けっして万能じゃないってことだ。
だからこそ、
「来い――」
呼び出す。
自分の力の精髄。
その一つを。
「【竜翼盾】」
俺の左腕に小型の盾が装着された。
ヴ……ンッ。
盾の端から光があふれ、『光の盾』が形成される。
「なんだ? 盾なんかで俺たちと戦おうってのか? あ?」
大男の魔族がすごむ。
「なら、盾ごと切り裂いてやろう」
青年魔族が剣を抜いた。
かなりの威力を持つ魔剣だということが、見ただけで分かる。
「だけど――関係ないんだ」
俺は彼らに向かって盾をかざした。
「全部吹き飛ばすからな!」
ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ……!
盾が輝き、竜巻が召喚された。
「な、なんだと――!?」
「天候操作!? 人間ごときが、そんな超魔法を――」
二人の魔族が驚きの声を上げた。
天まで届く超巨大竜巻は、単にすさまじい風をまき散らしているだけじゃない。
ばりっ、ばりばりっ……!
なんと空間自体を砕き、割っていた。
あちこちに生じた空間の亀裂が周囲のものを見境なく吸い込む。
「うわ……爆裂系とは違う意味でまずいな、これ……」
さすがは魔竜王の魔法。
俺が思った以上にとんでもない威力らしい。
……っていうか魔法の説明のところを読んでから発動したんだけど、『空間が裂けます』なんて書いてなかったぞ……?
その辺りまで含めて書いておいてほしいもんだ。
……なんて文句を言っても始まらない。
「このまま次元の狭間に消えろ!」
俺は竜巻を魔族たちに向けて動かした。
そう、この竜巻は俺の意志によってある程度移動するのだ。
さすがに自由自在に軽々と動かせるわけじゃないけど――。
魔族たちに向けてぶつけるくらいはできる。
「お、おのれ……っ!」
二人の魔族はすぐさま竜巻に向けて、ありったけの魔力弾を放った。
が、びくともしない。
それくらいじゃ吹き飛ばすことも、破壊することもできない。
「なら、これで――」
今度はノークが魔剣を振るう。
黒い斬撃波が竜巻にぶつかり――それだけだった。
「天使を百体単位で切り裂く、この魔剣が……通じないだと……!?」
驚愕の声を上げるノーク。
それから、すぐにその表情に冷静さが戻り、
「――逃げるぞ」
冷たい声で告げる。
「ハア? 人間ごときを相手に逃げるってのかよ!」
ヴァルガスが反対した。
ノークとは対照的に、こっちは感情をむき出しにしている。
人間を見下す感情を――むき出しにしている。
「くだらないプライドにとらわれるな。戦況を冷静に判断しろ」
「うるせえ!」
言い争いを始める二人。
が、
「もう遅い」
俺は二人に言い放った。
「加速しろ、竜巻」
俺は竜巻に命じる。
さらに速度が増し、彼らは空間の割れ目――次元の裂け目へと吸い込まれていく。
「ぬおおあああああああああああああああああああああっ……!?」
ヴァルガスは呆気なく次元の裂け目に消えていった。
そして、
「ぐっ、おのれ……」
ノークの方は次元の狭間から出てこようとしていた。
こいつの方がヴァルガスよりも、かなり強いんだろう。
魔力を全開にして次元の裂け目の吸引力に抗い、無理やり出てくるつもりだ。
このままだと、こっち側に完全に戻ってくるな……。
押しこむしかない――。
「……この技、竜っぽいから使いたくないけど」
きっと、ただでさえプリムが俺を怪しんでいるのに、決定打になってしまうだろう。
けれど、ノークをこっちの世界に舞い戻らせてはいけない。
やるしかない――。
「おおおおおっ、【竜咆弾】!」
俺の背後に竜の形をしたオーラが浮かび上がった。
その口が開き、巨大なエネルギー弾が放たれる。
「な、なんだとぉぉぉぉぉぉっ……!?」
ノークはエネルギー弾に押し返され、今度こそ次元の狭間に消えていった。
「ふう……」
俺はやっと一息をついた。
それからおそるおそるプリムの方を振り返る。
「魔竜王の、力――」
あっさりバレた。
「もしかしたら、魔王以上の……脅威かも」
震えながら俺を見つめている。
いや、にらんでいる。
あ、『魔王以上にヤバい奴』扱いされちゃってるよね、これ……。
魔族は撃退したものの、今度はプリムの対応に追われそうだ――。