そして一週間後。
地道な作業で地形改造やらモンスター対策やらを進め、ようやく一段落した。
というわけで、身近な人間を誘って、今日は海水浴である。
もちろん、単なるレジャーじゃなくて、実際に海水浴をすることで新たな問題点を探る意味もある。
で、そのメンバーというと、プリムにソフィア、エレーンさんといったいつもの面子だ。
また、他にも近所の人とか、ソフィアの友だちとか、エレーンさんの傭兵仲間なんかもいて、総勢で30人ほど。
なかなかにぎやかな一向になった。
で、
「よーし、さっそく……」
俺はソフィアやプリムたちを振り返った。
「遊ぶぞ~!」
「やったー!」
「はーい」
「ふふ、海水浴なんて何年振りかねぇ」
水着姿のソフィア、プリム、エレーンさんが嬉しそうに笑う。
「お、みなさん、おそろいで」
派手なビキニ姿の美女が歩いて来た。
ん、誰だ――って、
「レオニーアさん!?」
以前、村の作物の独占契約を持ち掛け、俺たちを詐欺同然の契約で騙そうとした悪徳商人だ。
「いややなぁ、警戒せんといてや」
レオニーアさんが苦笑する。
「この前のことは堪忍してな。ウチもちょっとそっちに不利な契約にしすぎたなぁ思って反省してるんや」
「してなさそうですけど」
「そんなことないって! ウチの目ぇ、見てな」
「欲望が渦巻いてるように見える」
「うぐっ……そ、そんなことないで」
俺がストレートに言ったら、レオニーアさんはたじろいでしまった。
きっと今回やって来たのも、何か金が絡んだことだろう。
絶対そうに決まってる――。
「いややなぁ、ウチはゼルさんたちと親睦を深めたかったんや」
「親睦……」
「で、うちの商会に任せてもらえれば、この海水浴場を有料化して村の資金に――」
「いや、ここは無料だから」
っていうか、親睦を深めるって言った舌の根が乾かないうちに新しい契約――きっとまた詐欺同然のあくどいやつだろう――を持ちかけてるじゃないか。
「怪しいなぁ……」
俺はレオニーアさんをジト目で見た。
「あらぁ? そんなじっくり見られたら照れるなぁ。ウチの水着姿、気になるんか?」
言いながら、レオニーアが体をくねらせ、しなを作った。
露出度の高いビキニ水着で、しかもやたらとナイスバディなので色っぽい。
「うう……」
ドキッとはするものの、俺としてはやっぱりレオニーアへの警戒心が強かった。
「ふふふ、ほれほれ」
すり寄ってくるレオニーアさん。
「ねえ、契約書……かわしてくれまへん?」
「って、色仕掛けか!」
「むむ、色仕掛け!?」
ソフィアがすごい形相で振り返った。
さっきまではプリムと波打ち際で遊んでいたようだ。
「ゼルにちょっかい出すのは禁止!」
「んん~? 別にあんたがゼルさんの彼女ってわけやないやろ? ウチが彼とイチャイチャするのは自由やん」
「イチャイチャはしてないぞ」
「イチャイチャするのは、もっとだめ~!」
俺のツッコミをはるかに上回る声量でソフィアが叫んだ。
「な、なんか、すごい勢いだな……」
「とにかくっ! ゼルに近づいちゃダメっ! ゼルにアプローチするのはもっとダメっ! だってゼルは、あたしの……あたしの……」
「んん? やっぱり、あんたはゼルさんのことを――」
「っ……! そこはツッコんじゃダメっ!」
顔を真っ赤にして叫ぶソフィア。
さっきから叫びっぱなしである。
「ソフィアちゃんはウチにダメダメばっかり言うなぁ」
レオニーアさんが肩をすくめた。
なおもワイワイ言い合っている二人から、俺はそっと離れた。
と、
「平和ですね」
プリムがにっこりと微笑みながら近づいてくる。
明るいひまわり色のビキニとパレオの組み合わせだ。
……意外と胸があるんだな、プリムって。
普段は体のラインが出にくい僧衣を着ているから分からなかったけど、こうしてみると彼女の胸元はむっちりと肉が盛り上がっていて、魅惑的な膨らみを作り出していた。
清楚な雰囲気とのギャップで、よけいにエロく見える。
「……どうかしました?」
「えっ」
「何か微妙に視線が怪しいような……?」
言いながら、プリムは若干ジト目になっていた。
ぎくりっ。
俺がプリムの胸を見てたことを気づかれたか……!?
い、いや、落ち着け、ゼル。
まだ俺がプリムをエロい目でみてしまったことに気づかれたとはかぎらない。
単に俺が挙動不審に見えたのかもしれない。
とにかく、ごまかさねば――。
「み、みんなで海に入ろう!」
俺は急いで話題を変えた。
「ふふ、その前に準備運動ですね。いちにー、さんしー」
プリムは微笑みながら準部運動を始めた。
俺たちも同じく準備運動をする。
「にーにー、さんしー」
「さんにー、さんしー」
一通り準備運動をして、プリムやソフィア、エレーンさんと一緒に海に入った。
しばらく浜辺沿いで泳いでいると波が大きくなってきた。
「ゼル、あの波に乗らない?」
「お、いいな」
ソフィアに誘われ、俺たちは二人で波に向かって及ぶ。
ざっぱーん。
波にさらわれ、流されていく俺たち。
水しぶきが舞い上がる中、俺たちは笑顔だった。
楽しい――。
「ウチも混ぜてーな」
レオニーアさんがにっこり笑って泳いできた。
豊かな胸がぷるんぷるん揺れている。
さっきプリムに指摘されたみたいに、レオニーアさんにも『どこ見てるん? ウチの胸? あははは』とか言われそうだから、慌てて視線を逸らす。
「どこ見てるん? ウチの胸? あははは」
本当に言われた!
「み、見てませんよ……」
「むむむ……ゼルを誘惑してる……」
ソフィアが顔をしかめた。
やっぱりレオニーアさんには含むところがあるんだろう。
とはいえ、せっかくの海水浴だ。
ここはいったん過去のわだかまりを捨てて、一緒に楽しんでもいいか。
ソフィアやレオニーアさんと一通り泳いだ後、俺はいったん浜辺に上がった。
ソフィアとレオニーアさんは引き続き波とたわむれている。
「わーい、また波が来た~!」
「だんだん波が大きくなるな~。ウチの故郷には海がなかったから、こういうのは楽しいわ」
「へえ、レオニーアさんって内陸部の出身?」
「ああ、生まれも育ちもゼラニス王国や」
意外と仲良く話してるな。
と、前方ではプリムが貝殻を拾っていた。
「あ、ゼルさん。見てください、綺麗な貝殻がたくさん――」
うっとりした顔だ。
「こういうの、好きなんだな」
「ええ、可愛いし、綺麗だし……集めて、後でアクセサリーに加工しようかな、って」
「えっ、そういうこともできるんだ」
「意外と器用なんですよ、私」
にっこり笑うプリム。
「あ、ゼルさんも一緒に探してくれませんか。こっちの方にもたくさん貝殻があって……」
「ああ、二人で探すか」
今度はプリムと一緒に貝殻探しを楽しむ俺。
――そうやって俺たちは日暮れ前まで海水浴を楽しんだ。
うん、これは思った以上に楽しいぞ。
周辺を整備して、観光客が遊べるように色々整えたいな。
モンスター封じの結界を万全にするのは当然だけど、食堂関係とか土産物屋とか……まだまだやらなきゃいけないことがいっぱいだ。
※
一方、そのころ。
「見えて来たよ、グラント」
「ピエルン村……以前より城壁が強化されているな」
フィオは魔法による遠隔視で、グラントは双眼鏡でそれぞれ遠方からピエルン村を観察していた。
二人の背後には数千の兵士。
これから村に攻め入るための手勢だ。
「各員、装備の最終点検。それから小隊ごとに作戦行動の最終確認だ。決行は明日の早朝。それまで準備を怠るなよ」
グラントが命令を下す。
村には一人、強大な魔術師がいるという情報が入っている。
また、未確認だがあの『雷鳴の聖女』が潜伏しているという噂もある。
「一筋縄ではいかないだろうな……だが、我ら帝国軍は不敗、無敵。必ずや皇帝陛下のご期待に応え、勝利を手にしてみせる……!」
開戦は、いよいよ明日――。
地道な作業で地形改造やらモンスター対策やらを進め、ようやく一段落した。
というわけで、身近な人間を誘って、今日は海水浴である。
もちろん、単なるレジャーじゃなくて、実際に海水浴をすることで新たな問題点を探る意味もある。
で、そのメンバーというと、プリムにソフィア、エレーンさんといったいつもの面子だ。
また、他にも近所の人とか、ソフィアの友だちとか、エレーンさんの傭兵仲間なんかもいて、総勢で30人ほど。
なかなかにぎやかな一向になった。
で、
「よーし、さっそく……」
俺はソフィアやプリムたちを振り返った。
「遊ぶぞ~!」
「やったー!」
「はーい」
「ふふ、海水浴なんて何年振りかねぇ」
水着姿のソフィア、プリム、エレーンさんが嬉しそうに笑う。
「お、みなさん、おそろいで」
派手なビキニ姿の美女が歩いて来た。
ん、誰だ――って、
「レオニーアさん!?」
以前、村の作物の独占契約を持ち掛け、俺たちを詐欺同然の契約で騙そうとした悪徳商人だ。
「いややなぁ、警戒せんといてや」
レオニーアさんが苦笑する。
「この前のことは堪忍してな。ウチもちょっとそっちに不利な契約にしすぎたなぁ思って反省してるんや」
「してなさそうですけど」
「そんなことないって! ウチの目ぇ、見てな」
「欲望が渦巻いてるように見える」
「うぐっ……そ、そんなことないで」
俺がストレートに言ったら、レオニーアさんはたじろいでしまった。
きっと今回やって来たのも、何か金が絡んだことだろう。
絶対そうに決まってる――。
「いややなぁ、ウチはゼルさんたちと親睦を深めたかったんや」
「親睦……」
「で、うちの商会に任せてもらえれば、この海水浴場を有料化して村の資金に――」
「いや、ここは無料だから」
っていうか、親睦を深めるって言った舌の根が乾かないうちに新しい契約――きっとまた詐欺同然のあくどいやつだろう――を持ちかけてるじゃないか。
「怪しいなぁ……」
俺はレオニーアさんをジト目で見た。
「あらぁ? そんなじっくり見られたら照れるなぁ。ウチの水着姿、気になるんか?」
言いながら、レオニーアが体をくねらせ、しなを作った。
露出度の高いビキニ水着で、しかもやたらとナイスバディなので色っぽい。
「うう……」
ドキッとはするものの、俺としてはやっぱりレオニーアへの警戒心が強かった。
「ふふふ、ほれほれ」
すり寄ってくるレオニーアさん。
「ねえ、契約書……かわしてくれまへん?」
「って、色仕掛けか!」
「むむ、色仕掛け!?」
ソフィアがすごい形相で振り返った。
さっきまではプリムと波打ち際で遊んでいたようだ。
「ゼルにちょっかい出すのは禁止!」
「んん~? 別にあんたがゼルさんの彼女ってわけやないやろ? ウチが彼とイチャイチャするのは自由やん」
「イチャイチャはしてないぞ」
「イチャイチャするのは、もっとだめ~!」
俺のツッコミをはるかに上回る声量でソフィアが叫んだ。
「な、なんか、すごい勢いだな……」
「とにかくっ! ゼルに近づいちゃダメっ! ゼルにアプローチするのはもっとダメっ! だってゼルは、あたしの……あたしの……」
「んん? やっぱり、あんたはゼルさんのことを――」
「っ……! そこはツッコんじゃダメっ!」
顔を真っ赤にして叫ぶソフィア。
さっきから叫びっぱなしである。
「ソフィアちゃんはウチにダメダメばっかり言うなぁ」
レオニーアさんが肩をすくめた。
なおもワイワイ言い合っている二人から、俺はそっと離れた。
と、
「平和ですね」
プリムがにっこりと微笑みながら近づいてくる。
明るいひまわり色のビキニとパレオの組み合わせだ。
……意外と胸があるんだな、プリムって。
普段は体のラインが出にくい僧衣を着ているから分からなかったけど、こうしてみると彼女の胸元はむっちりと肉が盛り上がっていて、魅惑的な膨らみを作り出していた。
清楚な雰囲気とのギャップで、よけいにエロく見える。
「……どうかしました?」
「えっ」
「何か微妙に視線が怪しいような……?」
言いながら、プリムは若干ジト目になっていた。
ぎくりっ。
俺がプリムの胸を見てたことを気づかれたか……!?
い、いや、落ち着け、ゼル。
まだ俺がプリムをエロい目でみてしまったことに気づかれたとはかぎらない。
単に俺が挙動不審に見えたのかもしれない。
とにかく、ごまかさねば――。
「み、みんなで海に入ろう!」
俺は急いで話題を変えた。
「ふふ、その前に準備運動ですね。いちにー、さんしー」
プリムは微笑みながら準部運動を始めた。
俺たちも同じく準備運動をする。
「にーにー、さんしー」
「さんにー、さんしー」
一通り準備運動をして、プリムやソフィア、エレーンさんと一緒に海に入った。
しばらく浜辺沿いで泳いでいると波が大きくなってきた。
「ゼル、あの波に乗らない?」
「お、いいな」
ソフィアに誘われ、俺たちは二人で波に向かって及ぶ。
ざっぱーん。
波にさらわれ、流されていく俺たち。
水しぶきが舞い上がる中、俺たちは笑顔だった。
楽しい――。
「ウチも混ぜてーな」
レオニーアさんがにっこり笑って泳いできた。
豊かな胸がぷるんぷるん揺れている。
さっきプリムに指摘されたみたいに、レオニーアさんにも『どこ見てるん? ウチの胸? あははは』とか言われそうだから、慌てて視線を逸らす。
「どこ見てるん? ウチの胸? あははは」
本当に言われた!
「み、見てませんよ……」
「むむむ……ゼルを誘惑してる……」
ソフィアが顔をしかめた。
やっぱりレオニーアさんには含むところがあるんだろう。
とはいえ、せっかくの海水浴だ。
ここはいったん過去のわだかまりを捨てて、一緒に楽しんでもいいか。
ソフィアやレオニーアさんと一通り泳いだ後、俺はいったん浜辺に上がった。
ソフィアとレオニーアさんは引き続き波とたわむれている。
「わーい、また波が来た~!」
「だんだん波が大きくなるな~。ウチの故郷には海がなかったから、こういうのは楽しいわ」
「へえ、レオニーアさんって内陸部の出身?」
「ああ、生まれも育ちもゼラニス王国や」
意外と仲良く話してるな。
と、前方ではプリムが貝殻を拾っていた。
「あ、ゼルさん。見てください、綺麗な貝殻がたくさん――」
うっとりした顔だ。
「こういうの、好きなんだな」
「ええ、可愛いし、綺麗だし……集めて、後でアクセサリーに加工しようかな、って」
「えっ、そういうこともできるんだ」
「意外と器用なんですよ、私」
にっこり笑うプリム。
「あ、ゼルさんも一緒に探してくれませんか。こっちの方にもたくさん貝殻があって……」
「ああ、二人で探すか」
今度はプリムと一緒に貝殻探しを楽しむ俺。
――そうやって俺たちは日暮れ前まで海水浴を楽しんだ。
うん、これは思った以上に楽しいぞ。
周辺を整備して、観光客が遊べるように色々整えたいな。
モンスター封じの結界を万全にするのは当然だけど、食堂関係とか土産物屋とか……まだまだやらなきゃいけないことがいっぱいだ。
※
一方、そのころ。
「見えて来たよ、グラント」
「ピエルン村……以前より城壁が強化されているな」
フィオは魔法による遠隔視で、グラントは双眼鏡でそれぞれ遠方からピエルン村を観察していた。
二人の背後には数千の兵士。
これから村に攻め入るための手勢だ。
「各員、装備の最終点検。それから小隊ごとに作戦行動の最終確認だ。決行は明日の早朝。それまで準備を怠るなよ」
グラントが命令を下す。
村には一人、強大な魔術師がいるという情報が入っている。
また、未確認だがあの『雷鳴の聖女』が潜伏しているという噂もある。
「一筋縄ではいかないだろうな……だが、我ら帝国軍は不敗、無敵。必ずや皇帝陛下のご期待に応え、勝利を手にしてみせる……!」
開戦は、いよいよ明日――。