「ゼルさんは、私のことをどう思ってらっしゃるのですか?」

 プリムが真剣な表情でたずねた。

「どう思って、って……」

 まるで恋の告白みたいな台詞だ。
 もちろん、そんな意味じゃないことは分かってるけど。

「えっ、あ、や、やだ、えっと、そ、そういう意味じゃ……ないです……」

 急にプリムが顔を赤らめた。

「恋の告白みたいな台詞でしたね、あはは……」

 照れているらしい。

「……というか、ゼルさんは私のことを嫌ってますよね?」
「えっ」

 俺は驚いた。

 プリムを嫌う理由なんてない。

 村で何か月も一緒に過ごしてきた仲間だし、レオニーアさんの一件では詐欺契約に引っかかりそうになるところを助けてもらった。

 他にも普段からの作業を手伝ってもらうことも多い。

「だって私はあなたを『世界の敵』として認識していたんですよ。今は……違うと思っていますが、初めて会ったときは警戒していました」
「まあ……ピリピリしてたもんな」

 言って俺は苦笑する。

「でも嫌う理由なんてないよ。今までさんざん世話になったし、楽しく過ごしたこともいっぱいあった。俺たち、友だちだろ?」
「えっ……とも……だち……?」

 俺の言葉に、プリムは目を丸くしていた。

「あ、あれ? 友だちだと思ってたのは、俺だけ……」

 ちょっと落ち込んでしまう。

「ち、違います! いえ、そのっ、私のことをそんな風に見てくれているとは思いもよらず――」
「いやぁ、付き合いも長くなってきたしさ。一緒にいろんなイベントもこなしたし、友だちってことでいいかな、って」

 相手との関係が『友だちなのかどうか』をわざわざ説明するのって、妙に照れるな……。

 しかも、相手はちゃんと俺のことを友だち認定してくれてるんだろうか?

 何せ、出会った当初は明確に俺のことを敵認定してたからな……。

「友だち――」

 プリムがふふっと微笑んだ。

「や、やっぱり……友だち認定はナシ……?」
「いえ、嬉しいです」

 言いながら、彼女は目元をぬぐった。

 もしかして、泣いてる……?

「すみません。なんだか嬉しくて、つい」

 プリムは照れつつ泣き笑いをするという、なかなか複雑な表情を浮かべていた。

    ※

「よかった、プリムさんとは友だち止まりなんだ……」

 ソフィアは二人の様子をそっと覗いていた。

 ゼルが『今日は村のインフラを点検する』と言っていたので、作業場所を予想して先回りしてきたのだが――。

 そうして偶然を装って彼に会おうと思ったら、すでに先客がいた。

 プリムは、偶然ゼルと出会ったのだろうか?

 それとも、まさか――。

(あたしと同じこと考えて、先回りしていた……?)

 だとすれば、恋のライバルだ。

「プリムさんのことは好きだけど、ゼルに関しては譲れないのよね――」
「ふふん、気になるのかい」
「ひあああああっ!?」

 いきなり声をかけられ、ソフィアは思わず飛び上がってしまった。

「あ、びっくりさせた? ごめんね~」

 明るい声とともに現れたのは、傭兵のエレーンだ。

「コソコソして何してるのかな、と思ったら……片想い相手を見てたわけだ」
「か、かかかかか片想いとか別にそういうわけじゃあのその」
「もうバレバレだし認めたら? 別に言いふらしたりしないさ」
「……うう、そうです」

 エレーンの追及に、ソフィアはあっさり白状した。

「うーん、今のところ彼が誰かを好きな様子はないんだよね」

 と、エレーン。

 傭兵だから武骨でそういった恋とか人情の機微には疎いのだと勝手に思っていた。

 意外なほどコイバナも『いける口』らしい。

「ソフィアはゼルの一番身近にいる女の一人なんだし、とにかく距離を詰め続けて、あとは勢いで落とせばいいさ」
「距離を……詰める……」

 まあ、それが難しいのだが。

「あたしもなんかサポートするよ。気が向いたらね」
「ありがとうございます」

 ソフィアはペコリと頭を下げた。

「で、どこがいいわけ?」
「……彼に恋しちゃいけませんか」

 ソフィアはムッとしてエレーンを見据えた。

 彼を馬鹿にされたのかと思ったのだ。

「いつも村の人たちのために一生懸命働いて、時には村の危機に立ち向かって、時にはあたしと一緒に他愛のないことで笑ったり、遊んだり……そんな彼に、気が付いたら……惹かれていて」

 言いながら、だんだん恥ずかしさが増していく。

 しゅううう……と頭から湯気が出そうだ。

「はは、他意はないよ。ごめんごめん」

 苦笑交じりに謝るエレーン。

「どこを好きになったのかな、って思っただけ」
「あ……すみません、あたしこそ」

 ソフィアは頭を下げ、

「どうやったら距離を縮められるでしょうか……?」
「うーん……あたしも剣で斬ったはったの世界で生きてきたからねぇ。恋愛マスターってわけじゃないし」
「でも、エレーンさん美人だし、明るいし、かっこいいし、きっと言い寄られることもあったんじゃないですか? 恋愛経験けっこうあるんじゃないですか、ねえねえ?」
「ふふ、女に過去を聞くのは野暮じゃない?」
「恋愛初心者のあたしにご指導ください、上級者様」

 ソフィアはすがるようにエレーンに請うた。

「あははは、上級者かどうかは分からないけど、まあソフィアよりは経験あるかもね」

 エレーンが苦笑する。

「あたしでよければ知恵貸そうか?」
「やったー!」

 ソフィアは両手を上げてバンザイした。

「で、では、さっそく……ゼルと距離を縮める方法を伝授してください! こう必勝法とか攻略法みたいなものを……」