「はい、では『第50回・村をよくするための定例会議』を始めます! はくしゅ!」

 ソフィアが言った。

 ぱちぱちぱち。

 俺とプリム、エレーンさん、その他何人かのメンバーがぱちぱちと拍手をする。

「いつの間にか50回か……」

 よく続いたもんだ。

「というか、大半はただ集まって飲み食いするだけですよね」

 冷静に指摘するプリム。

「一時期は毎日集まってたよね」

 と、エレーンさん。

「べ、別にみんなで一緒に食事したいとか、口実を付けてゼルに会いたいとか、そういうのじゃないんだからねっ」

 ソフィアが顔を赤くして言った。

 ん、最後なんか言ったか?

「ふふ、ちょっと本音もれてたよ、ソフィア」
「あ、つい……」

 エレーンさんの指摘に、ソフィアはますます顔を赤くする。

 本音が漏れる?
 なんの話だ……?

「――と、その前に! まずは腹ごしらえ! 腹が減っては戦ができぬ! いいアイデアも出ない!」
「テンション高いなぁ」
「やっぱり、みんなで集まるのって楽しいし!」

 俺のツッコミにソフィアがにっこりと笑う。

 ……というわけで、俺たちの前に料理が並べられた。

 いずれもピエルン村の名産品となった作物を使ったメニューである。

 おお、どれもいい匂いだ。
 さっそく食事開始――!



「いやー、これ美味しいね~」

 ソフィアが目を細める。

 いまや村の名産……というか、国の名産と呼ばれつつある『ギャラクティカポテト』と『ダイナマイトキャロット』のコンソメスープ。

 シンプルな味付けだけに、素材の味がよく活きている。

 そして、その『素材の味』に関しては、どこにも負けない自信がある。

「うん、美味しい」

 俺もソフィアと同じく目を細めた。

 プリムやエレーンさんたちも同じ表情だ。

 やっぱり美味しい食べ物を食べると幸せな気分になれるなぁ。
 そのうち、また別の作物の品種改良にも挑戦してみようかな。

 村の名産をさらに増やす――うん、いいかもしれない。
 ますますこの村が栄えちゃうな。

「どうしたんですか、ニヤニヤして」

 プリムが俺を見て微笑んだ。

「いや、村を発展させるために、新しく品種改良に取り組んでみようかな、って」
「えっ、また名産品が増えるの?」

 ソフィアがガタっと机を揺らして立ち上がる。

「楽しみ♪」
「私もです」
「いいねいいね」

 エレーンさんもニコニコ顔だ。

 ……冷静に考えると、さっきから全然会議してないな。

「ま、いつもだいたいそんな感じか」

 適当に集まって、適当に駄弁って、それだけで会議が終わることも多々ある。

 そして、それでいいんだと思う。

「あ、そうだ。私、一つ思ったんですけど――」

 プリムがひょこっと手を上げた。

「はい、プリムさん。発言を許可します」

 ソフィアが議長っぽく名指しした。

「では――」

 こほん、と咳ばらいを一つするプリム。

「以前、ゼルさんが村を覆う城壁を作ってくださいましたよね? あれは強化や補強することはできないんですか?」
「えっ」
「最近、モンスターが強くなっているという話を聞いたんです。あくまで王都付近の話ですが――」

 プリムの話は、俺には初耳だった。

「もしかしたら村の近くにも、今までより強力なモンスターが訪れるかもしれません。それに備えて城壁を強化できたらいいんじゃないかと……」
「なるほど。備えは必要だな」
「そうそう、備えは必要」

 なぜか偉そうに腕組みしてうなずくソフィア。

 こいつ、議長っぽく振るまいたいだけだな、たぶん……。
 ま、いいんだけど。

「よし、城壁の強化をしてくるか」

 村を覆う城壁は、何か月も前に作ったものだ。

 もしかしたら、その後にモンスターの襲来で破損している場所があるかもしれない。

 それに、俺もこの数か月で竜魔法のことを色々と学んでいる。
 城壁を強化するような方法を思いつくかもしれない。

「さっそく行ってくるよ」



 城壁作成の竜魔法をサーチすると、石レベルというものが出てくる。

 前にはなかった項目だ。

「ん、石レベル?」

 どうやら城壁に使う石を、より強固なものに変えられるらしい。

 以前はこんな項目がなかったことを考えると、この数か月で俺の竜魔法の熟練度が上がった、ということなんだろう。

 それによって城壁作成魔法が次の段階に進化した――と考えるべきか。

「つまり、前より頑丈になるわけか。いいな、これ」

 村がより安全になるということだし、さっそく進めてみよう。