一樹とモグー、それとセニアもセバスを救う意見で一致した。そのことを選ぶところまでは進んだ。さらにセニアからは、協力者を一人追加してくれるという。これで最大人数だ。この四人でなんとか救い出す必要がある。
もちろん偽教皇を暗殺することは、計画に織り込みたい。
一樹は、明日のセニアとの作戦会議までに、いま作れる物は全力で製作可能な物を作り、準備を始める。必要なのは、ありったけの『ポショ』と『蘇生薬』だ。
一樹の武器は、暗殺術と格闘術それと紅目化だ。何より『蘇生薬』で死なない兵士になれるのは最大の強みだろう。残念ながらまだ期待の銃は名前だけが確認できて、グレーアウトで選択できず製作に移れない。
当初は『偽物より本物』と考えていたけど、今は『本物より偽物』と考えている。
どうやっても作るものは、どれも名前の前に『偽』とつくものだから『本物を超えた偽物』を作る必要がある。そうなると、効能が本家よりも高いことがすべてだ。価格は元手が掛からなければいかようにもつけられる。
――そういえば、ガチャがあったな。
それはJOBレベルと引き換えに、ランダムで武器を獲得できる物があった。
JOBポイント五十を消費して特殊剣を得られる。
今回必要な物はあげてあるので、暗殺者から奪った短剣以外にも、仕入れておくのは良さそうだと一樹は考えていた。
それならばと、さっそく試して見ることにした。
「これでいいのか? なんか簡単すぎて不安しかないな」
「どったの?」
「ああ。俺のスキルでJOBレベルを一定量使って特殊な武器をランダムで召喚ができるんだ」
「え! 何それすごい」
「だよな。ただ何が出るかは完全ランダムだから、少し不安なんだけどな」
「結構使うの? ポイントって」
「五十だな」
すると意外な発言を一樹は耳にした。
「私には無い物だから、何ともわからないけど楽しそう」
――無いだと?
元魔獣だとそうしたらポイントは付与されないのだろうか。
てっきりJOBポイントは誰しも持っているものだと思い込んでいた。
他の人も職業レベルが上がると同時に、JOBポイントが付与されると想像していたのだ。
後日あらためて、モグーに聞いてみようと一樹は心に書留めておいた。なければ製作スキルとしてある『コンパネ』をいよいよモグーのために作ることにもなる。
「まあそうだよな。何が出るかわからないし。期待もある」
「うん。うん。今やるの?」
「ちょうど今からだ。やるぞ!」
「うん!」
一樹はさっそく、五十ポイント分を捧げる意識でいると、目の前で何か手のひらサイズの黄金色の魔法陣が床上で激しく回転していく。
「なんだこれ? すごいな」
「こんなにキラキラしていると期待しちゃうよね」
次第に回転が速くなり、光も強くなると目を開いていられなくなった。手をかざしながら様子を見ていると、数十秒程度で収まり、その場所には黒い短刀が鞘つきで置かれていた。
「これは短刀か。ちょうど暗殺術の短剣術が多少でも活かせるか」
「何かただ寄らぬ雰囲気を感じるよ? おめでとう? かな?」
「ありがとな」
一樹は、無骨な何も装飾をしていない艶消しのされた真っ黒なさやを左手で掴み、右手でつかを握ると鞘から恐る恐る引き出す。
すると、日本刀独特な刃と呼べる銀色の反りのあるものが現れた。刃渡り三十センチぐらいだろうか指先から肘ぐらいまでの長さに匹敵する。
刃と地の境目にある紋様上の波が美しいとさえ見えた。表面は水につけたように滑らかで金属質な銀色の輝きはまるで鏡面のようにさえ見える。塚とツバの間にある縁に文字が小さく刻まれているのを発見した。
――なんだ? 『切腹』だと?
どういうわけか『切腹』と書かれており、あらためて拡張現実での視界で見てみると説明が書かれていた。
一樹が険しい顔をして眺めていたせいか、モグーは心配そうに尋ねてきた。
「どしたの?」
「あっごめん。文字が刻まれていて何かと思って見ていたんだ」
「うん。それで?」
「そしたらさ、短刀でどこを切っても、腹に横一文字で深く切り込むとあるんだよな」
モグーはよほど驚いたのか、両掌を顔の前に持っていくと口を隠すような仕草で驚いて見せていた。
「何それすごくない?」
「だよな。指先を少し切っただけでも、腹を深々と切られるなんぞ誰も想像できないし、いきなり致命傷が与えられる」
「うん、うん。すごいね」
「まだまだ経験が少ない俺には、ほんとありがたい」
どうやら大当たりを引いたようだ。ただし、試すのはぶっつけ本番になりそうだった。
特殊剣を得るというぐらいだからどのような物かと思っていたら、案の定特殊すぎた。特徴は非常にシンプルで良い。さすがにJOBポイント五十を持っていくだけの物はある。
試したい気持ちはたかぶるものの、今は『ポショ』と『蘇生薬』を作らなければならない。『ポショ』は一本作るのに比較的時間はかからないけど『蘇生薬』は非常にかかる。
今から取り組んでも『蘇生薬』は四人それぞれ三日間ほど分しか作れない。おそらく一本につき半刻はかかるだろう。別種を同時進行では作れないので一つひとつ集中が必要だ。
一樹が『ポショ』と『蘇生薬』の作成に集中している頃、セニアはダークエルフのエルザにも協力を仰ぐ。何の問題もなく二つ返事で了承をしてもらいセニアもホッとしていた。
詳しい事情は明日の顔合わせの時にすることで了解を得ていた。まだ一樹の『蘇生薬』の話はしていない。あの話は一樹から口止めされている以外にも、本人が言うべきだとセニアは考えていた。それだけ劇薬に近い恐るべき効果なのだ。
セニアは『蘇生薬』という秘密兵器を知ることから、密かに勝利を確信していた。何より死なない者が強い。仮に死しても即時復活するのであるならまさに不死身と言える。ゆえに、セバスの救出が成功することに、非常に大きな期待を抱いていた。
「楽しみね」
セニアは思わず、独言してしまうほど明日の期待に溢れていた。
もちろん偽教皇を暗殺することは、計画に織り込みたい。
一樹は、明日のセニアとの作戦会議までに、いま作れる物は全力で製作可能な物を作り、準備を始める。必要なのは、ありったけの『ポショ』と『蘇生薬』だ。
一樹の武器は、暗殺術と格闘術それと紅目化だ。何より『蘇生薬』で死なない兵士になれるのは最大の強みだろう。残念ながらまだ期待の銃は名前だけが確認できて、グレーアウトで選択できず製作に移れない。
当初は『偽物より本物』と考えていたけど、今は『本物より偽物』と考えている。
どうやっても作るものは、どれも名前の前に『偽』とつくものだから『本物を超えた偽物』を作る必要がある。そうなると、効能が本家よりも高いことがすべてだ。価格は元手が掛からなければいかようにもつけられる。
――そういえば、ガチャがあったな。
それはJOBレベルと引き換えに、ランダムで武器を獲得できる物があった。
JOBポイント五十を消費して特殊剣を得られる。
今回必要な物はあげてあるので、暗殺者から奪った短剣以外にも、仕入れておくのは良さそうだと一樹は考えていた。
それならばと、さっそく試して見ることにした。
「これでいいのか? なんか簡単すぎて不安しかないな」
「どったの?」
「ああ。俺のスキルでJOBレベルを一定量使って特殊な武器をランダムで召喚ができるんだ」
「え! 何それすごい」
「だよな。ただ何が出るかは完全ランダムだから、少し不安なんだけどな」
「結構使うの? ポイントって」
「五十だな」
すると意外な発言を一樹は耳にした。
「私には無い物だから、何ともわからないけど楽しそう」
――無いだと?
元魔獣だとそうしたらポイントは付与されないのだろうか。
てっきりJOBポイントは誰しも持っているものだと思い込んでいた。
他の人も職業レベルが上がると同時に、JOBポイントが付与されると想像していたのだ。
後日あらためて、モグーに聞いてみようと一樹は心に書留めておいた。なければ製作スキルとしてある『コンパネ』をいよいよモグーのために作ることにもなる。
「まあそうだよな。何が出るかわからないし。期待もある」
「うん。うん。今やるの?」
「ちょうど今からだ。やるぞ!」
「うん!」
一樹はさっそく、五十ポイント分を捧げる意識でいると、目の前で何か手のひらサイズの黄金色の魔法陣が床上で激しく回転していく。
「なんだこれ? すごいな」
「こんなにキラキラしていると期待しちゃうよね」
次第に回転が速くなり、光も強くなると目を開いていられなくなった。手をかざしながら様子を見ていると、数十秒程度で収まり、その場所には黒い短刀が鞘つきで置かれていた。
「これは短刀か。ちょうど暗殺術の短剣術が多少でも活かせるか」
「何かただ寄らぬ雰囲気を感じるよ? おめでとう? かな?」
「ありがとな」
一樹は、無骨な何も装飾をしていない艶消しのされた真っ黒なさやを左手で掴み、右手でつかを握ると鞘から恐る恐る引き出す。
すると、日本刀独特な刃と呼べる銀色の反りのあるものが現れた。刃渡り三十センチぐらいだろうか指先から肘ぐらいまでの長さに匹敵する。
刃と地の境目にある紋様上の波が美しいとさえ見えた。表面は水につけたように滑らかで金属質な銀色の輝きはまるで鏡面のようにさえ見える。塚とツバの間にある縁に文字が小さく刻まれているのを発見した。
――なんだ? 『切腹』だと?
どういうわけか『切腹』と書かれており、あらためて拡張現実での視界で見てみると説明が書かれていた。
一樹が険しい顔をして眺めていたせいか、モグーは心配そうに尋ねてきた。
「どしたの?」
「あっごめん。文字が刻まれていて何かと思って見ていたんだ」
「うん。それで?」
「そしたらさ、短刀でどこを切っても、腹に横一文字で深く切り込むとあるんだよな」
モグーはよほど驚いたのか、両掌を顔の前に持っていくと口を隠すような仕草で驚いて見せていた。
「何それすごくない?」
「だよな。指先を少し切っただけでも、腹を深々と切られるなんぞ誰も想像できないし、いきなり致命傷が与えられる」
「うん、うん。すごいね」
「まだまだ経験が少ない俺には、ほんとありがたい」
どうやら大当たりを引いたようだ。ただし、試すのはぶっつけ本番になりそうだった。
特殊剣を得るというぐらいだからどのような物かと思っていたら、案の定特殊すぎた。特徴は非常にシンプルで良い。さすがにJOBポイント五十を持っていくだけの物はある。
試したい気持ちはたかぶるものの、今は『ポショ』と『蘇生薬』を作らなければならない。『ポショ』は一本作るのに比較的時間はかからないけど『蘇生薬』は非常にかかる。
今から取り組んでも『蘇生薬』は四人それぞれ三日間ほど分しか作れない。おそらく一本につき半刻はかかるだろう。別種を同時進行では作れないので一つひとつ集中が必要だ。
一樹が『ポショ』と『蘇生薬』の作成に集中している頃、セニアはダークエルフのエルザにも協力を仰ぐ。何の問題もなく二つ返事で了承をしてもらいセニアもホッとしていた。
詳しい事情は明日の顔合わせの時にすることで了解を得ていた。まだ一樹の『蘇生薬』の話はしていない。あの話は一樹から口止めされている以外にも、本人が言うべきだとセニアは考えていた。それだけ劇薬に近い恐るべき効果なのだ。
セニアは『蘇生薬』という秘密兵器を知ることから、密かに勝利を確信していた。何より死なない者が強い。仮に死しても即時復活するのであるならまさに不死身と言える。ゆえに、セバスの救出が成功することに、非常に大きな期待を抱いていた。
「楽しみね」
セニアは思わず、独言してしまうほど明日の期待に溢れていた。