「焼き尽くせ……テラフレアあぁっ!」
バーバラの両手から放たれた巨大な火球が、魔物たちの群れの中心に着弾し、火柱が上がる。
「グギャギャ!」
完全に、群れごと仕留めたはずだった。しかし、炎に包まれながらも、雄叫びを発して数体の魔物が飛び出し、バーバラたちに襲いかかる。
「うそでしょ! きゃあああ!」
「ふざけんじゃ、ねえっ!」
間一髪のところで、ジャックが魔物を貫き、肩で息をする。
「ジャック……助けてくれたのねっ」
「バーバラてめえ、寝ぼけてんのか! あんなもんがテラフレアだと? とどめさすならきっちりさしやがれ、何のためにこっちが前で踏ん張ってやったと思ってんだ!」
「なっ……なによ! あんたたちがちゃんとしないから、取りこぼしたんでしょ! えらそうに命令しないで!」
大きく舌打ちをして、ジャックが残りの魔物に向かっていく。
この日の討伐も散々で、ギルドに戻る頃には誰も彼もが満身創痍だった。
「なんなのこれ! あーむしゃくしゃする!」
バーバラは、身に着けていた首飾りを乱暴に引きちぎり、床にたたきつけた。
何もかもが上手くいかない。議会やシーヴの住民たちからの評判は下がり続けているし、実際に成果も上がっていない。
それでも、自分だけはと思っていた。
投げ捨てたのは、シーヴギルドの英雄が身に着けていた首飾りで、追放したノアから奪い取ったものだ。
真っ二つに折れ、先端の石にもひびが入ってしまったがらくた同然のロッドは、せんべつにくれてやった。
だが首飾りは、トップにはめこまれた石が深紅の輝きを放ち、えも言われぬ美しさと輝きを放っていたので、もらってやったのだ。
親の形見なのだと泣きじゃくり、最後の最後まで手放そうとしなかったものだから、どれだけの品かと楽しみにしていたというのに。
バーバラが身に着けて数日で、みるみるうちに輝きは色褪せ、乾燥してしおれた果実のような見た目に変わってしまった。
そればかりか、身に着けているとどうにも肩が重く、調子が出ない。
「あのガキ、呪いの首飾りなんて押しつけやがって……!」
追放に加担し、あまつさえ無実の罪すらきせて、率先して首飾りを奪い取ったことなど忘れたかのように、バーバラは怒り狂った。
「ものにあたるんじゃねえよ」
荒れ狂うバーバラを遠目に、ジャックが面倒くさそうに吐き捨ててギルド本部の奥へと消えていく。
調子が上がらないせいで、ジャックとの仲もぎくしゃくしている。
チームはすっかりばらばらで、ジャックの個人技で、以前より格下の魔物をどうにか倒して依頼達成の数を稼ぐのが精一杯。
バーバラ自身も、原因不明の魔力切れや出力不足に悩まされている。
議会や住民だけではなく、ギルド内での評価も下がる一方だ。エースチームの特権だった最上階の広々とした部屋からは追い出され、今ではメインホールからたった一階上の、狭苦しい部屋に押し込められている。
「ふざけんな! ふざけんな! ふざけんなぁっ!」
床に落ちた首飾りを何度か踏みつけて、肩で息をしたバーバラは、にんまりと醜悪な笑みを浮かべて、首飾りをそっと拾い上げた。
「ぜひお譲りいただきたい、なんて言っていた商人がいたわね」
見た目は少しくたびれてしまったが、品は同じだ。
あのときに提示された額で、ぜひとも買い取ってもらおうではないか。
まだ溜飲が下がらず、ギルド本部の扉を乱暴に蹴飛ばすと、バーバラはのしのしと商店街区画へと消えていった。
バーバラの両手から放たれた巨大な火球が、魔物たちの群れの中心に着弾し、火柱が上がる。
「グギャギャ!」
完全に、群れごと仕留めたはずだった。しかし、炎に包まれながらも、雄叫びを発して数体の魔物が飛び出し、バーバラたちに襲いかかる。
「うそでしょ! きゃあああ!」
「ふざけんじゃ、ねえっ!」
間一髪のところで、ジャックが魔物を貫き、肩で息をする。
「ジャック……助けてくれたのねっ」
「バーバラてめえ、寝ぼけてんのか! あんなもんがテラフレアだと? とどめさすならきっちりさしやがれ、何のためにこっちが前で踏ん張ってやったと思ってんだ!」
「なっ……なによ! あんたたちがちゃんとしないから、取りこぼしたんでしょ! えらそうに命令しないで!」
大きく舌打ちをして、ジャックが残りの魔物に向かっていく。
この日の討伐も散々で、ギルドに戻る頃には誰も彼もが満身創痍だった。
「なんなのこれ! あーむしゃくしゃする!」
バーバラは、身に着けていた首飾りを乱暴に引きちぎり、床にたたきつけた。
何もかもが上手くいかない。議会やシーヴの住民たちからの評判は下がり続けているし、実際に成果も上がっていない。
それでも、自分だけはと思っていた。
投げ捨てたのは、シーヴギルドの英雄が身に着けていた首飾りで、追放したノアから奪い取ったものだ。
真っ二つに折れ、先端の石にもひびが入ってしまったがらくた同然のロッドは、せんべつにくれてやった。
だが首飾りは、トップにはめこまれた石が深紅の輝きを放ち、えも言われぬ美しさと輝きを放っていたので、もらってやったのだ。
親の形見なのだと泣きじゃくり、最後の最後まで手放そうとしなかったものだから、どれだけの品かと楽しみにしていたというのに。
バーバラが身に着けて数日で、みるみるうちに輝きは色褪せ、乾燥してしおれた果実のような見た目に変わってしまった。
そればかりか、身に着けているとどうにも肩が重く、調子が出ない。
「あのガキ、呪いの首飾りなんて押しつけやがって……!」
追放に加担し、あまつさえ無実の罪すらきせて、率先して首飾りを奪い取ったことなど忘れたかのように、バーバラは怒り狂った。
「ものにあたるんじゃねえよ」
荒れ狂うバーバラを遠目に、ジャックが面倒くさそうに吐き捨ててギルド本部の奥へと消えていく。
調子が上がらないせいで、ジャックとの仲もぎくしゃくしている。
チームはすっかりばらばらで、ジャックの個人技で、以前より格下の魔物をどうにか倒して依頼達成の数を稼ぐのが精一杯。
バーバラ自身も、原因不明の魔力切れや出力不足に悩まされている。
議会や住民だけではなく、ギルド内での評価も下がる一方だ。エースチームの特権だった最上階の広々とした部屋からは追い出され、今ではメインホールからたった一階上の、狭苦しい部屋に押し込められている。
「ふざけんな! ふざけんな! ふざけんなぁっ!」
床に落ちた首飾りを何度か踏みつけて、肩で息をしたバーバラは、にんまりと醜悪な笑みを浮かべて、首飾りをそっと拾い上げた。
「ぜひお譲りいただきたい、なんて言っていた商人がいたわね」
見た目は少しくたびれてしまったが、品は同じだ。
あのときに提示された額で、ぜひとも買い取ってもらおうではないか。
まだ溜飲が下がらず、ギルド本部の扉を乱暴に蹴飛ばすと、バーバラはのしのしと商店街区画へと消えていった。