ダンジョンに着いたと言われて弓を持ち始めたが、僕はある違和感に気づいた
「…ちょっと、マナさん?」
「なによ」
「ここ…中級ダンジョンじゃ、ないですよね?」
そう、僕たちが入ってきたダンジョンには無いこの威圧感…そしてほのかに鼻を刺す血の臭い、ここは
「そうよ、上級者ダンジョンよ?」
「いや、レベル飛ばし過ぎじゃ無いですか?」
まだ中級ダンジョン一回しか行ったことがない。だからこそ僕の力が通用するとは思えないのだ
「そんなことないわよ、だって今じゃもう私より月宮の方がよっぽど強いわ」
「だとしても、この威圧感だとさすがに畏怖されそうなのですが?」
まだ高ランクダンジョンには指で数えられるほどしか行っていないし、何しろここは僕のトラウマでもある場所なのだ。僕は上級者ダンジョンで目が失明をした…怖くないはずがないのだ
「しょうがないわね」
そう口にしながらマナはどんどんと僕に近づいてくる
「な…なに?」
「こ、これなら怖くないでしょ」
マナは、僕の手にそっと手をおいた
「っ!?」
「な、何よそんなに私と手を繋ぐのは…いや?」
「そ…そんなことはないけど、さ…この状態だと流石に…周りに勘違い、されるよ…?」
見えてはいないが周りには人がいないわけではない。しかも、異性と手を繋いでいる…目立たないはずがない、そう思っていたのだが
「別に…あなたとなら勘違いされても…」
小さい声でマナはそんな事を言い出した。
声が出そうになるのを全力で堪えたが…まさかマナは僕のこと…
「はーい、そこで立ち止まらないでください」
僕がそんな事を考えていると、ダンジョンの入り口に立っていた係員に呼び止められてしまった。
……恥ずかしすぎる
「と、とりあえず行こう…か」
「そ、そうね…」
僕たちは互いに変な空気になりながらも、ダンジョンに入って行った。
この心情の変化に2人は気づき始めていた