「遅いな、いつもだったらもう来てもいい時間帯のはずだけど…」
まさか、昨日の言ったことを気にして1人でダンジョンに行ったりしていないだろうか
いや、あれほど約束したのだ。それはないと…信じたい。だが何か理由があって行かなければいけない状態だったら? そうじゃなくても僕に連絡の出来ない用事や事件に巻き込まれていたら!?
一度リーダーを亡くしてからの影響か最悪の事態が頭をよぎる。
「…一度マナの家に行くか」
こうして、念のためじいさんの弓を持ってマナの家に来たのだ
一度、ドアに付いてあるブザーを押したが返事はない
鍵は掛かっているだろうと思ったのだが…
ドアノブに力を入れた瞬間、「ガチャッ」という音が響いた。
「あいつ、家にいるとしてもダンジョンに行くとしても戸締りぐらいはちゃんとしろよ…

僕は呆れながらもマナの家に入ったのだった

生活音はなく、どこかに行くことを記載された手紙も見当たらなかった。
「ちょっといや、かなり…まずい状況じゃかいか…?」
急いで僕はギルドに報告しようとし、マナの家を出かけた瞬間
「誰かいるの?」
この声は、ここの家主である…マナだった
「マナ!お前どうしたんだよ…心配したんだぞ!?」
「つつ、月宮!? ちょっと待って!」
「なんでだ! 僕に声も掛けずいなくなったりして!」
今思えば、少し遅れた可能性も十分にあった。マナを心配しすぎたのかもしれない
「そ、それについては謝るわ…でも今は本当に待って!」
マナは早口になりながら焦っていた
「どうした…何かあったなら言ってくれよ!」
「いや…その」
マナの挙動や言動でより僕は安心できなくなった……この後に言われた言葉を聞かされなければ
「…お、遅れたの…は、その…お風呂に入ってた…からであって」
「なんだ、心配して損した…」
「…その、今…服着てないの…」
「いやー、良かった良かっ…!?」
僕は声帯を引っこ抜かれたように言葉が止まってしまった。
「え!? 今裸なの!?」
「は、恥ずかしいこと言わないでちょうだい!」
「なら、もっと早く言ってよ!?」
「…だって! 月宮があんなにも慌ただしく言ってきたのよ…言えるタイミングなんてなかったわ…!」
「それは…ごめん、と、とりあえず服を着てきて!」
目が見えていなくても…声で、そこに居るのが分かってしまう。だから、少し想像してしまうのだ……見たことないにも関わらず
………好きな人の家に上がっているため緊張しているというのに、これ以上事件が起きたら本当に…まずい
「とりあえず…無事なのは良かった…」
心は全然大丈夫ではないが一安心する事はできた。マナは大きな足音を立て、その場を離れた。着替えるため別の部屋に行ったのだろう
とりあえず僕はマナが来るまで待っていた
「それにしても、たかが時間に少し遅れただけでこんなに心配するなんて…まるでマナの行動を制限して…いやそれは無い…はず。」 
マナにこの声は聞かれてないと分かっていても声がどんどんと小さくなっていく
「しかし、僕マナのこと好…」
僕が最後まで言いかけた瞬間、ドアが開く音がした。慌てて口を塞ぎ何もなかったように装った
「ただいま、何か言った?」
「…っ、いや?」
「そう? ならいいのだけど、じゃあいきましょうか」
「う、うん!」
僕の背中は滝のように汗が流れていた。途中汗臭いと言われて心にダメージを負ったが、家で言った言葉を聞かれるよりよっぽどマシだ