ぐちゃぐちゃな気持ちで眠った夜のこと。ある夢を見た。
私は砂で造られた巨大なピラミッドをひたすらに登っている。そのピラミッドには私以外にも大勢の人が険しい顔をして登り続けていた。よく見ると、彼らは私と同い年くらいに見えた。私と彼らは意味もなく必死でピラミッドの頂点へと向かって登った。ところが、彼らのうちの何人かはバランスを崩して、下の方へと向かって落ちていく。
「ああ!」
「そんな!」
「誰か!」
下を見ると転がり落ちてゆく姿が見え、彼らの悲痛な叫びが聞こえてきた。前を向くと、バランスを崩しかけている女の子が目の前に一人居た。彼女はこちらに気づいた様子で、こう訴えた。
「ねえ、助けてよ。お願い」
助けようと一瞬考えた。だけど、そんなことをしたら、私まで落ちかねない。そんなのは嫌だ。私は見て見ぬふりをした。彼女に構わず登り続けようとする。すると、彼女は私の足を掴んだ。
「助けようとしないのね。この人でなし!」
彼女は必死の体勢だった。いつ落ちてもおかしくはない。彼女が私の足を掴んだ以上、私も落ちることは決定的だった。それ以前に、私は夢の中とは言え、見知らぬ顔の女の子に「人でなし」と言われたことがショックだった。動揺する。すると、私の方が体勢を崩して、彼女もろともピラミッドの下へ向かって転がり始めた。
「ああ!」
彼女は私が体勢を崩した瞬間、私の足から手を離したが、それでも落ちていく。
「あんたのせいだ! あんたの…… 」
彼女の最後の言葉は聞くに堪えないものだった。私は勢いよく下へと向かって転がっていく。
ああ、このまま死ぬのだろうか。そんなことを考えた。気が遠くなるほど転がり続けて、腕も足も折れに折れて、身体中から血が出て、気を失った。
夢の中で目が覚めると、そこは真っ暗で何もない場所だった。
「ここは、どこ……」
辺りには誰もいない。ただ私だけがいる無の世界。そんな言葉がしっくりとくる場所だった。
「誰か!」
叫んでみた。誰からも返事は無かった。私は何とか、折れた足を動かして立ち上がる。立つのもやっとな感覚だった。立つことに慣れたところで私は無の世界を歩き始めた。この先に何かがあるというあては無い。それでも、なぜか、向こうへ行かなきゃという気持ちがあった。私は歩いた。
「はっ!」
気がつくと、家のベットにいた。時刻は朝の六時。いつもより早く起きてしまった。
呼吸が荒い。
「夢、か」
私は心を落ち着かせるためにベットを出て、キッチンでコップに水を注いで、飲んだ。あの夢は何だったのだろうか。水を飲み干して、もう一杯水を飲んだ時、考えても意味はないことを私は考えていた。この後、無の世界を彷徨い続ける不思議な夢はしばらくの間、見続けることになった。
この夢が無意識からのSOSだとも気づかずに。
私は砂で造られた巨大なピラミッドをひたすらに登っている。そのピラミッドには私以外にも大勢の人が険しい顔をして登り続けていた。よく見ると、彼らは私と同い年くらいに見えた。私と彼らは意味もなく必死でピラミッドの頂点へと向かって登った。ところが、彼らのうちの何人かはバランスを崩して、下の方へと向かって落ちていく。
「ああ!」
「そんな!」
「誰か!」
下を見ると転がり落ちてゆく姿が見え、彼らの悲痛な叫びが聞こえてきた。前を向くと、バランスを崩しかけている女の子が目の前に一人居た。彼女はこちらに気づいた様子で、こう訴えた。
「ねえ、助けてよ。お願い」
助けようと一瞬考えた。だけど、そんなことをしたら、私まで落ちかねない。そんなのは嫌だ。私は見て見ぬふりをした。彼女に構わず登り続けようとする。すると、彼女は私の足を掴んだ。
「助けようとしないのね。この人でなし!」
彼女は必死の体勢だった。いつ落ちてもおかしくはない。彼女が私の足を掴んだ以上、私も落ちることは決定的だった。それ以前に、私は夢の中とは言え、見知らぬ顔の女の子に「人でなし」と言われたことがショックだった。動揺する。すると、私の方が体勢を崩して、彼女もろともピラミッドの下へ向かって転がり始めた。
「ああ!」
彼女は私が体勢を崩した瞬間、私の足から手を離したが、それでも落ちていく。
「あんたのせいだ! あんたの…… 」
彼女の最後の言葉は聞くに堪えないものだった。私は勢いよく下へと向かって転がっていく。
ああ、このまま死ぬのだろうか。そんなことを考えた。気が遠くなるほど転がり続けて、腕も足も折れに折れて、身体中から血が出て、気を失った。
夢の中で目が覚めると、そこは真っ暗で何もない場所だった。
「ここは、どこ……」
辺りには誰もいない。ただ私だけがいる無の世界。そんな言葉がしっくりとくる場所だった。
「誰か!」
叫んでみた。誰からも返事は無かった。私は何とか、折れた足を動かして立ち上がる。立つのもやっとな感覚だった。立つことに慣れたところで私は無の世界を歩き始めた。この先に何かがあるというあては無い。それでも、なぜか、向こうへ行かなきゃという気持ちがあった。私は歩いた。
「はっ!」
気がつくと、家のベットにいた。時刻は朝の六時。いつもより早く起きてしまった。
呼吸が荒い。
「夢、か」
私は心を落ち着かせるためにベットを出て、キッチンでコップに水を注いで、飲んだ。あの夢は何だったのだろうか。水を飲み干して、もう一杯水を飲んだ時、考えても意味はないことを私は考えていた。この後、無の世界を彷徨い続ける不思議な夢はしばらくの間、見続けることになった。
この夢が無意識からのSOSだとも気づかずに。