病室で私は再び夢を見た。
 夢を見るのは友美に切りつけられた日の夜以来だった。

 ゾンビみたいな私は暗闇に差し込んだ光の方へと歩き続けていた。そこには何が待っているのだろうか。期待と不安を胸に私は、ついに光を掴んだ。光を掴んだ瞬間、それは眩く輝いた。私は思わず目を伏せた。

 眩い光があたりを包み込んで、温かな世界を作った。温かな光に包み込まれた私の目の前には綺麗な羽を持った孔雀と綺麗な銀色のナイフがあった。
「孔雀とナイフ……」

 私は孔雀とナイフに触れようとした。するとそれは形を変えて人になった。目前に居たのは、綺麗な孔雀色のドレスを着た咲とグレーのワンピースを着た友美がいた。
「友美……、咲……」

 私たちは固く抱き合った。私の頬に思わず涙が溢れた。抱き終えると、三人そろって泣いていたことに気がついた。
「ごめんね、こんな結末になっちゃって……」
 友美は涙を浮かべていた。
「私たちはあなたを傷つけてしまった……、本当にごめんね」
 咲もまた頬に涙を流しながら謝ってくれた。

 私は何も言えなかった。ただ、二人に会えたということだけで胸がいっぱいだった。
「友美と私は、これから行かなくちゃいけないところがあるんだ」
「だから、もうこれでお別れ」
 彼女たちが残酷な事実を突きつけた。そうだ、二人とももう現実には居ないのだ。

「待って! これからどこに行くの!」
 わかっていたのに私は聞いてしまった。友美は微笑んで答えてくれた。
「地獄よ。でも、安心していつかどこかで私たちに会える時が来るから。だから泣かないで」

「こんな状況で泣かないで言われても……」
 涙が溢れた。二人が私の肩を握ってくれた。彼女たちも悲しそうだった。

「地獄でもどこでも、私たちは私たち」
「そう、またどこかで会いましょう」
 二人が私の肩から手を離した。私の目は涙でいっぱいでよく見えていなかった。

「じゃあね」
「またね」
 二人はそう言って、光になってどこかへと飛んでいった。
 私は何も言えなかった。何も言えなかった。


「咲! 友美!」
 目が覚めるとそこは朝の病室だった。朝日が窓から射し込んでいた。私の目には涙が溢れていた。
 それ以来、咲と友美の夢を見ることはなかった。