その日は予備校の日だったが、わたしは休んだ。

門限が10時まであるこの日は遊べるので、最高な日だ。

駅のトイレにてメイクで着飾ってお気に入りのブレスレットとイヤリングを身に着ければ、
「フフッ、かわいい♪」

学校や家にいる陰キャの自分は鏡の中にはいなかった。

この日は電車に乗って、遠くのショッピングモールへと向かった。

3年前にできたこのショッピングモールに行ってみたいと思ってたんだよね。

何より、ここだったらわたしを知っている人なんて誰もいないだろう。

いろいろな店舗を見て回ったり、小腹が空いたらクレープを食べたり、タピオカドリンクを飲んだりしながら、ショッピングモールを楽しんだ。

少し前だったら、こんな楽しい時間を過ごすことなんてなかっただろう。

「ここ、いいな」

おしゃれな雑貨屋さんを見つけると、その中に足を踏み入れた。

流行りのドラマ主題歌の曲が流れている店内で、わたしは店員の人数と今ここにいる客の人数、防犯カメラの位置と数、死角になるところを全てチェックした。

…いけない、いつものクセでついチェックしちゃった。

今日はおしゃれをして、思いっきり遊んで楽しむ日なんだから!

そう思っていたら、
「おっ」

視界に入ったのはマニキュアだった。