「おい、人がトラックに轢かれたぞ！」

「救急車を呼べ！」

ーーどうして、こうなってしまったのだろう…？

周りが騒然としている中で、わたしは振り返っていた。

ーー“良いことはもちろん、悪いこともいつかは倍になって自分に返ってくる”って、じいちゃんがよく言っていたんだ

いつかの大滝くんの言葉が頭の中で反芻していた。

ーーそのうち、痛い目にあっても知らないからな

そうか、それが今になって返ってきたのか…と、わたしはそんなことを思った。

大滝くんに見つかって呼び止められた時点でちゃんと返せばよかったんだ。

初めて口紅を盗んだ日に両親に事情を説明して店に謝って返せばよかったんだ。

店を出た時に店員に謝って…いや、そのまま元の場所に戻せばよかったんだ。

違う…わたしがあの時、口紅を盗まなければよかったんだ。

いろいろと後悔をしても、もう遅かった。

躰が地面に大きくたたきつけられた。

痛い、痛い、頭が割れるように痛い、左足が痛い…。

目玉だけ動かして見てみると、左足がありえない方向に向いている。

頭から地面に広がっている赤いそれを見ていたら、プツリ…と意識が途絶えた。

☆★ＥＮＤ☆★