「俺、いじめられてたんだ。

雑用を押しつけられたり、無視されたり、それこそ口では言えないひどいことだって言われた。

このままじゃいけない、この状況を変えないといけない、あいつらが知らないところへ行かなきゃと思って、親の反対を押し切って遠くの高校を受験したんだ」

大滝くんは言った。

「お前を見ていたら中学時代の俺を思い出したって言うか…」

「だから?」

わたしはジロリと大滝くんを見つめると、
「そうやって偉そうに昔話をして何なの?

わたしからして見たら、自慢と嫌味にしか聞こえないんだけど?」
と、言った。

「言いふらしたいんだったらどうぞ言いふらしてください。

“やっていない”とか“勝手に言っているだけ”とか、もしくは“脅された”って適当に言い逃れをすればいいだけの話だし」

わたしはバカにするように笑った。

「因果応報」

「何よ?」

「“良いことはもちろん、悪いこともいつかは倍になって自分に返ってくる”って、じいちゃんがよく言っていたんだ」

大滝くんはわたしを見つめると、
「そのうち、痛い目にあっても知らないからな」
と、まるで捨てゼリフみたいなことを言ってわたしの前から立ち去った。

「…何よ、あいつ」

彼の後ろ姿を見ながら、わたしはそれしか言えなかった。