居場所がない。

「神戸さーん、掃除よろしくねー」

「あたしたち、用事があって早く帰らないといけないからー」

彼女たちはわたしに掃除を押しつけて、カバンを手に持つと教室を後にした。

「ねえ、カラオケに行こうよ!」

「その前にクレープ屋に行かない?」

…何が用事だ、遊びに行くだけじゃないか。

この前も用事があるとか何とかいろいろと言って掃除を押しつけてきたよね?

一軍で陽キャの彼女たちに文句を言っても逆ギレされるのが目に見えてるし、カースト外で陰キャのわたしのことなんて誰も助けてくれないのが目に見えているし、わたしもそれを理解している。

肝心の担任だって関わりたくないと言うように見てみぬふりをしている。

夕日が差している放課後の教室にいるのは、わたし1人だけだ。

黒板を消して、ほうきで床を掃いてゴミを捨てると、貯まったゴミ袋を手に持って教室を出た。

指定の場所にゴミ袋を置くと、その場から離れた。

教室に戻ると窓の鍵が全て閉まっているのを確認すると、カバンを手に持った。

ドアの鍵を閉めると、職員室へと鍵を持って行った。

下駄箱で上履きからローファーに履き替えると、校舎を後にした。