早羽にあんな事を言われてから頭の中にずっと杉浦くんがいる。
『好きなの?』『照れてんじゃないのぉ〜?』
思い出しただけで顔が熱くなる。
杉浦くんはどんな人なんだろうって思ってる自分がいる。
ドサッ
杉浦くんだ!!
平然なふりをしながらも私の心臓はドキドキいっていた。
「おはよ」
ん?独り言?
「ねぇ、おはよ」
思わず杉浦くんの顔を見るとその視線は私に向けられていて
さっきの言葉は自分に対してのものだと今さらながらに気づいた。
「お、おはよう!」
どもりながらも返事をすると杉浦くんは嬉しそうな顔をしてくれた。
「ごめんね、無視しちゃって」
「いや、俺の声が小さかっただけだから謝んないで」
杉浦くんは優しい。
私が悪いのに自分のせいにしようとしてくれているなんて。
「あのさ、俺のこと知ってる?」
はて?どういう意味なんだろう。
「えと、それは杉浦翔夜くんってこと?」
「あぁうん、ごめん。そう。何でもないや。やっぱり忘れて」
どうしたんだろう。すごい耳赤くなってる。
「耳、赤いけど大丈夫?」
そう言ったら杉浦くんの耳の赤さは顔全体にも広がって行った。
「ふふっ....!」
杉浦くんの焦り具合とか顔の赤さが面白すぎて、思わず笑ってしまった。
失礼だったよね、謝らなきゃかな。
「笑った」
え?
「笑った方が可愛いよ」
今度は私が赤くなる番だった。
平気でこういうことを言うからモテるんだ。
「恥ずかしい...」
「これからももっと恥ずかしくさせるよ」
ドキッ
ちょっと告白みたいで、なんて思って早速恥ずかしくなる。
杉浦くんが私なんかのこと好きなわけないのに。
自惚れにも程があるよ.....
「ねえメール交換しない?」
杉浦くんと私が?
「嫌なら別にいいんだけど」
そんな捨てられた子犬みたいな顔されると断れる女子はいないだろう。
「ううん!交換したい」
お互いスマホを出してメールを交換する。
杉浦くんのアイコンは犬のイラストだった。
特別上手なわけでもないけど愛情が湧く。
そんな絵だった。
「おっけー、ありがとう!あっじゃあ、俺戻るね」
そう言って杉浦くんは帰って行った。
今、私の手にあるスマホの中には杉浦くんのメールが入っている。
そんなことに嬉しくなる自分がバカみたいで悲しかった。
きっといや、絶対杉浦くんは私じゃなくても良かったんだ。
杉浦くんにとっては普通のことなのに私はいちいち喜んだりしてバカみたい。
私、杉浦くんのこともっと知りたい。
心からそう思った。