翔夜の家は一軒家だ。
とりあえずインターホンを鳴らすか。
ピンポーン
「はい」
猫かぶってない翔夜の低めの声。
「翔夜、あーけーてー!」
「無理、帰れ」
冷てぇな。ったくよぉ。
「じゃあいいや、この家の合鍵の場所知ってるし」
ガチャ
「来いよ」
久しぶりに見た翔夜は髪の毛が伸びて少しワイルドになった気がする。
「どうもどうも!開けてくれて嬉しいですわ!ちなみに本当は合鍵の場所知らないけど」
「チッ ふざけんなよお前」
怖いな。こっちはお前に元気を出してほしくて無理やり明るくしてやってんのに。
「ごめんて笑」
俺が謝るたび、翔夜はいつも困った笑顔をする。それは昔からある翔夜の癖だ。
「何で学校来ないんだよ。心配だ」
ここからが本題だ。
部屋が静まる。
「色々あんだよ」
だからなんだよ。
「俺には話せないのか?」
賭けに出るか。
翔夜は意外と優しくて人情深いんだ。
「そんなわけじゃねぇけど」
翔夜は困っていた。だからといって引くわけないけど。
「じゃあ何だよ。俺は信頼できないか?話してほしい」
「俺がどんな事を言っても友達のままでいてくれるか?」
翔夜は怯えたような目でこちらを見つめてきた。
「あったりまえだ!何なら親友になってやるよ」
胸を張って言う。
それでも翔夜は不安げだった。
とりあえず話してもらわなきゃな。
「話せよ」って言おうとしたら翔夜は自分から話し始めた。
「も、もし俺が人の心が見えるって言ったらどうする?」
面白い導入だ。さては国語点数高いな!
「今年の国語の点数は95点だったよ」
は...?
「導入なんかじゃない。俺は本当にここが見えるんだ」
え、すご。俺が思ってる事全部当たってる。
翔夜はバカみたいな表情をしていた。
そっか!これ全部思ってる事伝わってんのか!
やっほー!わかる?
「.....わかるよ」
すっげえ!アニメみたいだ。
自己紹介してよ!
「杉浦翔夜。血液型はB型で好きな食べ物はみかん」
天才だ....!
「お前すっげえな!!」
「子供かよ」
そう言いつつも翔夜は嬉しそうだった。
「お前、俺のこと軽蔑しない?」
翔夜はこれまで軽蔑されて否定され続けてきたんだな。それがわかる一言だった。
「あったりまえだ!ばか!」
そう言った俺の目からは大粒の涙がこぼれてきた。恥ずかしい。
「何で泣いてんだよ!」
お前も泣いてるけどな。翔夜。
「これからは俺ら親友な!」
「ありがとう。陽飛」
俺たちはハグをした。
それから俺は一言も喋らなかった。
けど、翔夜は楽しそうに1人で話していた。
翔夜の能力は案外便利だと思った。
他の人に聞こえずに一方的に意思疎通できるんだから。

今までよく頑張ってきたな。大変だったな。
お願いだから1人で抱え込むなよ。
何かあれば俺を頼れ。