公園に来た音羽さんは汗だくで息を乱していた。
走ってきてくれたんだ。嬉しくなる。
音羽さんは俺のことを心配してくれていた。
彼女の心には愛情があった。
「音羽さんは何してたの?」
わかってるはずなのにこの質問をした俺は卑怯だ。
「好きな人を助けるために飛んできたよ」
「好きな人って?」
困ってる音羽さんは頬を赤らめ「す、杉浦くん」と答えた。
やっぱり。正直嬉しい。
でもそれを表に出してはいけない。
彼女に心が読めることを話したい。
きっと怖がるだろう。俺から離れていくだろう。
それなら俺から離れてやる。
「何で?」
音羽さんの心の中に浮かんだ文字を声に出して読む。
「「好きだから」」
音羽さんは驚いて色々な事を考えていた。
声被ったよね?エスパー?って。
「俺はエスパーではないかな」
動揺してる音羽さんは『声に出ていたかな』とか思っていた。
「声には出てない、見えただけ」
言うのが怖い。否定されたくない。
でも音羽さんを傷つけた俺は否定されても、罵倒されても耐えるべきだ。
「音羽さんの好きな人は心が見えるみたいだ」
言った瞬間、音羽さんの考えている事がわからなくなった。
きっと何も考えられないくらい驚いているんだ。
さらに追い討ちをかけるように俺は言った。
「音羽さんがどれだけ外面良くしても俺に本音は隠せない。わかるんだ」
本当なの?
心の中でそう思っている音羽さんはその動揺を隠しきれず目に現れていた。
「この噂のことは本当にごめん、反省してる。だからもう関わらないようにする。ごめん。それじゃあ」
おかしいと思うけど。最低だけど。
もっと関わりたいと思っているけど。
そう言って公園から出た俺は涙を堪えながら家路についた。