無事(?)ファイヤーボールを消火することができた。

ゴブリン達は消化中にこっそり逃げたのか見当たらない。

ついさっきまでいたのだが逃げ足はかなり早かったみたいだ。

「助けてくださってありがとうございました。おかげで助かりました。あなたがここを通ってなかったら私はゴブリン達に殺されていましたわ」

ぺこりとお辞儀してくる。

手を掴まれて感謝の言葉をずっと伝えられ、たじろぐ。

お互いに自己紹介をした。

助けた少女の名前はフィーラ・エッセンルスト。
年齢は同じく15。
そしてこの森林を抜けた場所にある領地、アトランの領主の娘の一人で三女。
つまりトーフルのお隣の領地であり、とりあえずの目的地だった。

最初見た際に綺麗な金髪から、どこかの貴族の娘だろうかと予想していたが、やはりそうだったかと思ったアース。


案内を頼むと、一瞬迷うような顔をしたがすぐに笑顔になり了承してくれた。

「ありがとうございますフィーラさん! 」

お礼を言う。

「私達って同い年だし敬語じゃなくて、普通に話さない? も、もちろん嫌なら敬語でいいのだけれど……」

「嫌では無いけど流石に領主の娘さんにタメ口ってのは……」

しぶるアースにフィーラは、

「あら? あなた(は)領主の息子でしょ? なら、何もおかしくないし私自身がフィーラって呼ばれたいし、同年齢の人にくらい砕けて話したいのよ……だめかしら? 」

口に手を当て、そう言った。

「そこまで言われたら拒否できないじゃないか、ふぃ、フィーラ。それと僕はもう領主の息子でもなんでもない、ただの一般人だよ」

「さっき言ってた事情とやらが関係してるのかしら」

一瞬で見抜くフィーラ。

「話したくなければ話さなくていいわよ」

「そういう訳じゃないんだけど、なんというかその」

適性が無職だけで家どころか領地からも追い出されてここに来た、だなんて恥ずかしくて人には言いずらい。

口ごもっているアースに何かを感じたのかフィーラが言った。

「なんで領主の娘が一人で、しかも護衛の一人も付けないでこの森林に居るのか気になったでしょ? それは私がアトラン家の忌み子になったからよ」

「……そ、それって」

「そう、ハズレスキルを授かったの。職業はテイマー、それがわかった途端お父様やお姉様達は今までと態度を一変させて、家のメイドにも命令が言ったみたいで、良くしてくれていたメイドにも無視されるようになったの。これだけで終わったのならまだ耐えれたのですが……」

「まだあるのか!? 」

「領民からも冷たくされて、無視されるようになったの。途端、もうめまい止まらなくなって……ここに居たら殺されてしまうんじゃないかって不安になって逃げ出して、がむしゃらに走ってたらこの森林の中に入ってたのよ。座り込んで少し休憩してたらさっきのゴブリン達が襲いかかってきて、テイムも当然失敗して、もうだめだってところであなたが助けてくれたの」

「そうだったのか……僕なんかよりもずっと辛い仕打ちを受けてたんだな。追放されただけでくよくよしてたのが恥ずかしくなってきたよ」

「えっ? 追放ってまさかあなた……」

「実は……」

同じようにハズレスキルを引いたこと、そして家から追放されてさらに領地からも追放されたことを話す。

それを聞いたフィーラはぽつりと呟く。

「私と同じような境遇の人が居ただなんてね。……そうだ」

いいことを思いついたと言わんばかりに手をぽんっ、と打ちアースに右手を出す。

「似た者同士、親を見返す為に冒険者になってパーティを組まない? 修行して強くなっていずれ最強の冒険者になって、世界まで救っちゃってさ? 」

「無職の僕が世界なんて救えるか分からないけど、見返してやりたいって気持ちはフィーラに負けないくらいあるから、やれるだけやってみるよ。これからよろしくねフィーラ! 」

「ふ、ふんっ! 今、手とったからね! よろしくっていったからね! どれだけ私が弱くて足引っ張っても追放なんてしないでくださってよ!! 」

こうして固い握手を交わしたあと、二人並んで歩いていった。