「大丈夫ですか!? 」

驚いたように振り向き、アースの姿を確認して弱々しく頷く少女。

それと同時にゴブリン達もこちらを向く。

「君らはそのまま帰って欲しいなーなんて…」

4体のゴブリンが棍棒を持って駆け出してくる。

「見逃してもらえたりはしないよねぇ!!! あぁ、もう無能って追放されたばっかなのにさあ!! 」

すぅ、と息を吸って大声で叫ぶ。

「無職の無尽蔵(むじんぞう)の魔力みせてやる! ……僕も知らないけど」

それっぽく右手をまえにだし、人差し指だけ伸ばす。

飛びかかってきた1体目のゴブリンが目前にせまる。

「ええと、《魔力光線》? 」

人差し指から黒紫の光線が音速のスピードで放たれる。

心臓を貫通して、あっけなく倒れてしまう。

「え? 」

「ふぇ!? 」

『グガェ? 』

空中からドサッと落ちてきた。

それをゴブリン仲間たちがお互いの顔と交互に見渡す。

1体は仇をとらんと棍棒を手でポンポンと叩き、他の2体はアースの人差し指を見て怯えている。

『グガァァァ! 』

やる気の方のゴブリンが、今度は空中で振り被らず、下から叩きつけようとしてくる。

(さっきは即席で変な魔法打っちゃったから次は普通なのを……)

「打ってみたかった…《ファイヤーボール》! 」

幼なじみのナリスがよく見せに来た魔法でドヤ顔で自慢された。

それから絶対使ってみたいと思った魔法でもある。

剣の修行の傍らファイヤーボールも猛練習していた。

それが幸をなしたのかーーー

ゴオオオオオオオオと巨大な炎がゴブリンを包み込み、どんどんでかくなっていく。

「え、ちょ、これやばい……よな? 」

「森林が全部炭になっちゃいますよ!? 」

物凄い勢いでこくこくと頷く。

(やばいやばいやばいやばいやばい)

「ファイヤーボールってこんな地獄みたいな玉だったっけ!? ナリスが見せてくれたのはもっと小さくて手のひらサイズより一回り大きいくらいだったような。っ……それよりも消火することを考えないといけない」

今その瞬間も燃え広がっていく炎に焦りながらも考えをめぐらせる。

そしてはっとする。

(まだ木に炎が燃え移ってない今なら、水魔法を打てば……)

手のひらを空に向ける。

「《ウォーターボール》気持ちデカめで! 」

ザアァァァァァァァァ…!!!

ファイヤーボールの2倍の大きさの水の球体が空から落ちてくる。

「そして《アメフラシ》」

球体が平面に変化し、大量の水が降ってくる。


「ふぇ…ふぇぇぇぇぇぇ!?!? 」

無事ファイヤーボールは消化できたが、この場にいた全員がずぶ濡れになった。