「ごめん、俺のせいで。ずっと謝りたかった。本当、ごめん」
桜樹くんは頭を低く下げて謝ってくれた。
でもあの時の傷はまだ癒えていない。
裏切られること、悪口を言われること、全てが怖くなった。
「夏那が保育園来なくなってしばらくした後、夏那のお母さんに聞いたんだ。
あの出来事から笑わなくなって人との関わりを避けるようになったって。
それを聞いて俺のせいだと思ったんだ」
あの頃私たちは未熟だった。
桜樹くんは流されやすくて私は弱すぎた。
「夏那に会えなくなってから俺はおかしくなった。毎日が楽しくないし退屈だった。
俺のそばに夏那がいてほしいってずっと思っていた」
なんか告白みたい。
ってこんな時に思うことじゃないけど。
「もし同じクラスになれなかったらこのこと私に話さなかったの?」
違うクラスだったらこの事は私に隠してたの?
「いや、話してた」
「じゃあ同じクラスになったら話したいことって?」
そう言ったら桜樹くんは急にモジモジし始めた。
「えと、さっきも言ったけど俺のそばに夏那がいてほしい。
最低なことをした自覚はあるし反省してる。だからって許して欲しいわけでもない。
と、とにかく!俺はずっと夏那のことが好きなんだ」
え.....
やっぱり告白だったんだ。
「べ、別に!無理してそばにいてくれるとかしなくてもいいし、
告白したのは自己満レベルで付き合えたらなんて事少しも思ってない」
桜樹くんは悪くない。
きっと誰も悪くなくて幼さゆえの純粋さと悪意のない本音が引き起こした出来事だったんだ。
「私と付き合いたいの?」
少し意地悪かな。
「っ付き合いたい!いや、でも夏那の気持ちを尊重する。
無理しないでいいから」
あの時の"さよちゃん"と"はるかくん"は私の中で怖い存在だ。
でも今目の前にいる"遥我くん"はあの時の"はるかくん"じゃない。
2人は同一人物だけど違うんだ。
「じゃあ私のいうこと聞いて」
遥我くんは最初ポカンとしていたけど真剣な眼差しで頷いた。
「腕を大きく広げて」
私もあの頃の"なつなちゃん"じゃない。
月日を経て強くなったし、いろんなことを学んだ。