「ごめん、泣いて」
緋磨くんは落ち着いてた感じだったけどまだ目が赤かった。
「大丈夫だよ!気にしないで!」
隣にいる柚羽ちゃんはさっきの告白を思い出していたのか顔が赤かった。
「俺、ばあちゃんと2人暮らしなんだ。そのばあちゃんがこの前体調を崩して急患として病院に運ばれた。今でもICU(集中治療室)にいるほど悪くて....。この前のは病院からの電話だ。そこから学校を休んで病院にいた。」
やっぱりそうなんだ。
私にはお父さんとお母さんと妹がいるからその大変さは全然わからない。
それでもたった1人の家族が病院にずっといるのは悲しいことはわかる。
「お母さんとお父さんは?兄弟もいないの?」
柚羽ちゃん...めっちゃ単刀直入に言うじゃん!
「母さんと父さんは俺が物心つく前に離婚した。俺の親権は母さんだった。
でも大体1年後の秋、母さんは車に轢かれて死んだ。父さんは別に女の人を作ってたから母さんの葬式にも来なかったししばらく会ってないから顔も覚えてない。
ばあちゃんは1人になった俺を引き取ってくれた人なんだ。
それからずっと母さんの生命保険金で暮らしてきた。兄弟は元々いない」
お母さん亡くなってしまったんだ。おばあちゃんは1人になった緋磨くんを救ってくれた大切な人なんだ。
「何ですぐ話してくれなかったの?緋磨がすぐに言ってくれれば支えられたかもなのに.....」
「小学5年生になった時、1番仲が良かった子に正直に話したんだ。俺の家庭環境を。
『緋磨、めっちゃ変じゃん!えーかわいそうー!』
そう言われた。その子はすぐに他の人に広めて俺は可哀想で変な子になった。
この事を他の人に言ったらバカにされる。言ってはいけないんだ。
そこから嘘の家庭を作ってみんなに話した。
母さんが作ってくれた肉じゃがの美味しさ。父さんと一緒に買い物に行った楽しさ。
この嘘がバレては行けない、隠さなきゃいけない。そう思ってたからだ」
緋磨くんは諦めたように話した。
「その子ひどい....!緋磨....!ごめんねっ...!」
意図しない涙が溢れてくる。
私はこんなにつらい事を無理やり言わせてしまったんだ。
「泣くなって。小学生なんだから仕方ないだろ。それにどうせバレるから良い機会だった。
心配してくれてありがとう。迷惑かけてごめん」
あんなに悲しい事を仕方ないで済ませるなんて.....
「謝らないで。今度遥我も連れておばあさんのお見舞い行こう」
うん!
「おう!ありがとう!」