お母さんがカメラの準備している。
その間、辺りの綺麗な花を眺めていた。
お母さんのカメラの準備が出来たらしく、そこの中心に立つように指示されて私たちは移動した。私は白い紫陽花に囲まれる。
写真を撮られるのはすごく緊張する――。
だけど、いつもとは違う自分の姿に何だか自信が持てて、何枚か撮られているうちに緊張はほぐれていった。
桃李くんのお母さんはたまにそういう写真を撮るお仕事もしているらしい。手を後ろに回してとか、首を少し傾げてとか……こういうポーズして欲しいって分かりやすく指示してくれる。
「桃李も、写って?」
「えっ、俺も?」
ぐいっとお母さんに押されて、桃李くんは私の隣に来た。
「なんか、俺らカップルみたいだな」
「う、うん」
桃李くんの今の表情は、すごくはにかんだ笑顔。
ちょっと頬も赤い気がする。
こんな表情の桃李くん、見たことないかも。
「向かい合って、手を重ねてみて?」
お母さんが指示する。
桃李くんが手を出すと、私は上にそっと添える感じに手を置いた。
「こ、こんな感じか?」
「かな?」
手と手が触れると、ドキドキして彼と目を合わせられなくなった。
「ふたり、見つめあってね」ってお母さんが言う。
恥ずかしい気持ちになったけれど、勢いにまかせて彼の目を見つめた。
彼と目が合う。
桃李くんは全部カッコイイけれど、特に目が綺麗でカッコイイって、昔から思ってる。
至近距離で見つめると、心臓の音が早くなって、壊れてしまいそうな程に大きくなってくる。
「今日は、付き合ってくれてありがとな」
桃李くんがふわっと優しく微笑みながらお礼を言ってきた。お礼を言うのは私の方なのに。
だんだんと胸の中全体があたたかくなってきた。
今日の晴れたあたたかい天気みたいに。
「こっちこそ……ありがとう。本当に嬉しかったよ」
今、発した私のその言葉。
言ってて、今までの『ありがとう』がギュッと凝縮されたみたいに感じた。
一気に涙が溢れてきた。
その涙は多分、10年以上ためてきた感謝の気持ち。
多分、桃李くんがいなければ、怖くて保育園も小学校も中学校も毎日通えてなかったかもしれない。
桃李くんがいなければ、今とは違う私だったかもしれない。
桃李くんがいなければ――。
桃李くんがいてくれたから――。
今日のこのサプライズも、前に私が漫画を読みながら「ウエディングドレス、可愛い。着てみたいな」って言ったから、それを叶えてくれたんだよね?
「ありがとう、ありがとう桃李くん……」
桃李くんに「ありがとう」の気持ちをいっぱい言葉にして伝えた。
優しくぎゅっと抱きしめてくれた桃李くん。
「泣かないで、優衣花。優衣花が泣いてると苦しくなる」
桃李くんが耳元で声を震わせながら呟いた。
「ごめんね、桃李くん。このドレスもすごく可愛くて……嬉しすぎて、いっぱいありがとうって気持ちが溢れてきて。どうしよう、涙が止まらないの」
桃李くんが優しく私の頭をなでてくれた。なでられた感触、すごく安心する。
「桃李くん、本当にありがとう」
「本当はあの漫画のドレスみたいに、もっと細かいキラキラのとかつけたりしたかったんだけど難しくて。もう一回、リベンジさせて?」
「リベンジ?」
「優衣花に好きな人が出来て、将来もしも結婚することになったら、優衣花のドレスまた作りたい」
「……」
「いや、作りたくない」
「えっ?」
どういうことだろう……。
もう、私のドレスを作るのが嫌だってこと?
桃李くんが顔を上げて、私を真剣に見つめてきた。
「小さい時からずっと、俺のお嫁さんになってほしいって思ってたんだと思う」
「えっ?」
「優衣花、将来俺と結婚してほしい」
「……」
突然の予想外な言葉。
「他のやつと優衣花が結婚するとか、考えるだけで無理。他の人と結婚するならドレス作れないわ」
白い紫陽花に囲まれ、ウエディングドレスを着て。すごくロマンチックなこの状況の中で、ずっと好きだった人から告白された。
夢みたいだった。
夢、かな?
例え夢だとしても、返事をしないといけないよね。
「私は……」
上手く言葉が出てこない。
言いたいことは、はっきり決まっているのに。
今も自分の気持ちを上手く人に伝えようとすればするほど、緊張して伝えられなくなる。心の中に言葉を閉じ込めちゃう。
「俺は優衣花と付き合いたい。返事が難しかったら、うなずくか首を横に振るだけでもいいよ」
こんな時も桃李くんは、私が返事をしやすいように。
私のことを気遣ってくれて……。
伝えなきゃ――。
伝えたい――。
声が震えてもいい。
声が裏返ってもいい。
小さな声でもきっと大丈夫。
桃李くんならきっと、ありのままの私を受け止めてくれるから。
「桃李くん、わ、私も桃李くんが好きでお付き合いしたい、です」
声が震えて、裏返った。
でも、やっと振り絞って言えた言葉。
「気持ちを言葉にして伝えてくれて、頑張ってくれて……すごく感謝してる。本当に、ありがとう」
桃李くんはそう言うと、優しく微笑んでくれた。
✩.*˚
『ジューンブライド』
6月に結婚すると、一生幸せな結婚生活を過ごせるらしい。
帰り道、車の中で桃李くんのお母さんが詳しくその説明をしてくれた。そして私たちの告白する瞬間も動画でこっそり撮っていたらしく、見せてくれた。
結婚はまだだけど、その動画をみていると、本当に結婚したみたいだった。そして桃李くんとずっと一緒にいられて、幸せに過ごせる未来が想像できた。
「優衣花と結婚して、ずっと一緒にいられたら、本当に一生幸せでいられる気がする」って桃李くんが言ったから、私は「うん」って思いっきりうなずいた。そして、車の中で手を握り、二人で未来の話を少しだけした。将来一緒に住む家の話とか。
ずっとこれからも、桃李くんと一緒にいられますように――。
☆。.:*・゜
その間、辺りの綺麗な花を眺めていた。
お母さんのカメラの準備が出来たらしく、そこの中心に立つように指示されて私たちは移動した。私は白い紫陽花に囲まれる。
写真を撮られるのはすごく緊張する――。
だけど、いつもとは違う自分の姿に何だか自信が持てて、何枚か撮られているうちに緊張はほぐれていった。
桃李くんのお母さんはたまにそういう写真を撮るお仕事もしているらしい。手を後ろに回してとか、首を少し傾げてとか……こういうポーズして欲しいって分かりやすく指示してくれる。
「桃李も、写って?」
「えっ、俺も?」
ぐいっとお母さんに押されて、桃李くんは私の隣に来た。
「なんか、俺らカップルみたいだな」
「う、うん」
桃李くんの今の表情は、すごくはにかんだ笑顔。
ちょっと頬も赤い気がする。
こんな表情の桃李くん、見たことないかも。
「向かい合って、手を重ねてみて?」
お母さんが指示する。
桃李くんが手を出すと、私は上にそっと添える感じに手を置いた。
「こ、こんな感じか?」
「かな?」
手と手が触れると、ドキドキして彼と目を合わせられなくなった。
「ふたり、見つめあってね」ってお母さんが言う。
恥ずかしい気持ちになったけれど、勢いにまかせて彼の目を見つめた。
彼と目が合う。
桃李くんは全部カッコイイけれど、特に目が綺麗でカッコイイって、昔から思ってる。
至近距離で見つめると、心臓の音が早くなって、壊れてしまいそうな程に大きくなってくる。
「今日は、付き合ってくれてありがとな」
桃李くんがふわっと優しく微笑みながらお礼を言ってきた。お礼を言うのは私の方なのに。
だんだんと胸の中全体があたたかくなってきた。
今日の晴れたあたたかい天気みたいに。
「こっちこそ……ありがとう。本当に嬉しかったよ」
今、発した私のその言葉。
言ってて、今までの『ありがとう』がギュッと凝縮されたみたいに感じた。
一気に涙が溢れてきた。
その涙は多分、10年以上ためてきた感謝の気持ち。
多分、桃李くんがいなければ、怖くて保育園も小学校も中学校も毎日通えてなかったかもしれない。
桃李くんがいなければ、今とは違う私だったかもしれない。
桃李くんがいなければ――。
桃李くんがいてくれたから――。
今日のこのサプライズも、前に私が漫画を読みながら「ウエディングドレス、可愛い。着てみたいな」って言ったから、それを叶えてくれたんだよね?
「ありがとう、ありがとう桃李くん……」
桃李くんに「ありがとう」の気持ちをいっぱい言葉にして伝えた。
優しくぎゅっと抱きしめてくれた桃李くん。
「泣かないで、優衣花。優衣花が泣いてると苦しくなる」
桃李くんが耳元で声を震わせながら呟いた。
「ごめんね、桃李くん。このドレスもすごく可愛くて……嬉しすぎて、いっぱいありがとうって気持ちが溢れてきて。どうしよう、涙が止まらないの」
桃李くんが優しく私の頭をなでてくれた。なでられた感触、すごく安心する。
「桃李くん、本当にありがとう」
「本当はあの漫画のドレスみたいに、もっと細かいキラキラのとかつけたりしたかったんだけど難しくて。もう一回、リベンジさせて?」
「リベンジ?」
「優衣花に好きな人が出来て、将来もしも結婚することになったら、優衣花のドレスまた作りたい」
「……」
「いや、作りたくない」
「えっ?」
どういうことだろう……。
もう、私のドレスを作るのが嫌だってこと?
桃李くんが顔を上げて、私を真剣に見つめてきた。
「小さい時からずっと、俺のお嫁さんになってほしいって思ってたんだと思う」
「えっ?」
「優衣花、将来俺と結婚してほしい」
「……」
突然の予想外な言葉。
「他のやつと優衣花が結婚するとか、考えるだけで無理。他の人と結婚するならドレス作れないわ」
白い紫陽花に囲まれ、ウエディングドレスを着て。すごくロマンチックなこの状況の中で、ずっと好きだった人から告白された。
夢みたいだった。
夢、かな?
例え夢だとしても、返事をしないといけないよね。
「私は……」
上手く言葉が出てこない。
言いたいことは、はっきり決まっているのに。
今も自分の気持ちを上手く人に伝えようとすればするほど、緊張して伝えられなくなる。心の中に言葉を閉じ込めちゃう。
「俺は優衣花と付き合いたい。返事が難しかったら、うなずくか首を横に振るだけでもいいよ」
こんな時も桃李くんは、私が返事をしやすいように。
私のことを気遣ってくれて……。
伝えなきゃ――。
伝えたい――。
声が震えてもいい。
声が裏返ってもいい。
小さな声でもきっと大丈夫。
桃李くんならきっと、ありのままの私を受け止めてくれるから。
「桃李くん、わ、私も桃李くんが好きでお付き合いしたい、です」
声が震えて、裏返った。
でも、やっと振り絞って言えた言葉。
「気持ちを言葉にして伝えてくれて、頑張ってくれて……すごく感謝してる。本当に、ありがとう」
桃李くんはそう言うと、優しく微笑んでくれた。
✩.*˚
『ジューンブライド』
6月に結婚すると、一生幸せな結婚生活を過ごせるらしい。
帰り道、車の中で桃李くんのお母さんが詳しくその説明をしてくれた。そして私たちの告白する瞬間も動画でこっそり撮っていたらしく、見せてくれた。
結婚はまだだけど、その動画をみていると、本当に結婚したみたいだった。そして桃李くんとずっと一緒にいられて、幸せに過ごせる未来が想像できた。
「優衣花と結婚して、ずっと一緒にいられたら、本当に一生幸せでいられる気がする」って桃李くんが言ったから、私は「うん」って思いっきりうなずいた。そして、車の中で手を握り、二人で未来の話を少しだけした。将来一緒に住む家の話とか。
ずっとこれからも、桃李くんと一緒にいられますように――。
☆。.:*・゜



