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「いいなぁ〜優月!私も教科書見せてあげた〜い!」
「ほんと羨ましい!」
「それなのに優月ときたら、音無くんに興味ないんでしょ〜!?」
「いやまじ譲って!」
キャーキャー言ってる女子達。
あーもううるさい。
「いやいやそんな教科書見せても何にもなんないよー。」
「優月モテるのに、男子にだけは興味ないよね〜。」
「モテてないよ!実際人生で告られたことないからね?」
「あれだよあれ。男嫌いが有名すぎて誰も告白なんてしなかったんだよ。」
「いやーどうかなぁ〜。」
のらり、くらりとかわしていく。
別に男なんて興味ない。
意味を、感じない。
何も、うまない。
まあ私の母親が一人の男に定まらない人で、浮気して父親と別れ、今も懲りずに取っ替え引っ替えしてるっていう事への嫌悪もあるだろうけど。
あーあ、だめだなぁ。今日はやたらとマイナスな感じだ。
「どうしたの優月?」
「いやなんかちょっと体調良くないかもー…。」
「えぇっ!?大丈夫?」
「確かに見てみれば体調悪そう!!」
んなわけないでしょ仮病なんだから。
やだやだ毒ついちゃう。よくない。
「ごめん今日カラオケパスしていい…?」
「うん!もちろん!無理しないで!!」
「お大事にね〜。」
「バイバイ優月。」
「うん、じゃあねーみんな。」
ワイワイしながら教室を出ていく女子軍団にホッとする。
そして私はようやく緊張が解ける。
好きな友達でも気はやっぱり張るものだ。
これは別に私だけとは限らないと思う。
静か、だなぁ。
頬杖をついて窓の外を眺める。
誰もいない教室は耳が痛くなるほど静かで、それでいてちょっとした懐かしさと、どこからか来る特別感で満ちている。
ガラッ。
唐突に、扉が開いた。
「あれっ。朝谷ちゃんじゃん。」
音無光佑だった。
私は急いで笑顔の仮面を貼り付ける。
しけてる顔なんて見せられない。
「音無じゃん。どうしたの?」
「いやぁー、スマホ忘れた。」
「え、ツラ。ドンマイ。」
「そう言う朝谷は?」
「んー、考え事?」
「なんだそれ。放課後の教室で考え事とか黄昏てるやん。」
「ははっ。」
引き出しの中のスマホを取ると音無は私の前の席に座った。
「で?何考えてるの?」
ハッとするほどまっすぐな目で、真剣な目で見つめられて、思わず息を詰めた。