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学校ってなんて簡単なんだろう。

私はきっと、学校一の猫かぶりだ。

別に演じてるわけじゃない。でも、誰も私が本当は結構暗いなんて、知らないと思う。

自分で言うけどスクールカースト的にはトップにいるし。

明るいキャラで生きてるし。

本当に何度でもいうけど、演じてるわけじゃない。

ただ、これも私なんだと思う。ただ、めちゃくちゃに多面的なだけなんだ。

「ねえ今日カラオケ行くー?」
「あ、うん!行く行く!アニソン歌いたいんだよね!」
「いいね!優月歌上手いから楽しみ〜!」
「え〜、ありがと!」

チャイムの音が鳴る。

「わー!戻んなきゃ!じゃーね!」
「うん。」

先生が入る。
起立、気を付け、礼。
先生が雑談を始める。
生徒がわらう。
またしばらくして先生が授業を始める。
黒板はチョークで埋まっていく。

カタカタ、シュッシュ

ノートにシャーペンを走らせる音。
小声で話す声。

校庭から聞こえる体育の掛け声。
試合開始の笛の音。
音楽室から聞こえる合唱。

静かな教室に、学校の音が入り込み、ヒタヒタと満たしていく。
その音に耳を傾けて、私は板書だけをただノートに書き記していく。

授業中というのは何で楽なのだろう。
誰と関わるでもなく、一人の時間が訪れる。
心がしんと静まり返っている。
波風立たず、なだらかな平穏。
教室に満ちている音が一定のリズムで薄い波紋を広げていく。

「……さん、朝谷さん。」

不意に、コンコンコンと机を叩く音と共に隣からの声が聞こえ、泉に石を投げ込んだ。
ぽちゃんと水が跳ね、大きな波紋が広がっていく。

隣に目をやると、私の顔を覗き込んでいる男子。
中学まではそんな人現実にいないのにって思ってたようなスーパー人間。
イケメン、頭いい、運動神経抜群。性格ももちろん良し。
女子によくモテる。男子からも羨望の目を向けられる。
そんな音無(おとなし)光佑(こうすけ)と隣になってしまった私は、様々な女子たちに羨ましがられてるけど、残念ながら私はイケメンに興味がない。ほんっとに興味がない。

「あ、やっと気づいた。朝谷さんすっごい集中力だね。全然気づかないんだもん。」

ずっと声をかけられていたらしい。
私は心の中で切り替えスイッチを押す。

「ごめん!何?」
「教科書忘れちゃって…。見せてくんない?」
「あ!全然いいよ!」

教科書を音無(おとなし)光佑(こうすけ)の方に寄せて、私はまたノートを書いた。
私の心に泉はもう訪れなかった。