私は腰に抱きついた田貫さんをそのままに、ご飯もじゃがバターも口に詰め込む。

「急がなくていいよ、アンナちゃん」
「でも、キンカさんが閉めるの遅くなっちゃう」
「アンナちゃんがゆっくり食べ終わってからでいいんだよ、俺も食べちゃうから」

 そう言いながら、カウンターから出てきたキンカさんは、狐亮さんがいた席に座る。手に持ってるお盆の中身は私の目の前の定食と同じものだ。

 安心して、一口ずつ味わって食べる。じゃがバターはホクホクな上に、塩辛の塩っけが良い塩梅だし。きゅうりの浅漬けはご飯が進む。

 無言でひたすら食べ切れば、いつのまにか、清々しい気持ちが胸に広がっていた。

 両手を合わせて「ごちそうさまでした」と口にすれば、今日の悲しかったこと全てが消化されている。