お酒も飲めないくせに、ついつい寄ってしまうのはきっと居心地が良いからだろう。お父さん一号が右にずれて私の座る場所を開けてくれた。
カウンターに座れば、すぐに差し出されるホカホカのおしぼり。手を拭えば暖かさがじんわりと広がっていく。
「今日はね、田貫さんがいっぱい取ってきてくれたからキノコ尽くしだよ」
ニコニコとした笑顔で私の目の前に、きのこの和え物を差し出すのは店主のキンカさんだ。きのこの和え物には、小ネギが添えられていて緑色が気持ちを緩めてくれる。
田貫さんは隣にズレてくれたお父さん第一号。いつも、私のことを娘のように可愛がってくれるし、奢ってくれることも多々あるから申し訳なく思いつつも甘えていた。
でっぷりとしたお腹をカウンターに乗せながら、今日もビールを数杯飲んだ後のようだ。
「メインとご飯は今持ってくるから、先に和え物食べててよ」
一口、食べた瞬間にふわりとニンニクの香りが香る。噛めば、きのこの旨みがじゅわりと口の中で溶けていく。