(4)僕とドレークはアランを探す旅に出る

 僕とジャンヌは塹壕から敵陣に射撃を続けている。

「ジャンヌ、残り何発?」
「えーっと、20発だな」
「じゃあ、あと10発撃ったら逃げる?」
「そうね・・・。そう言ってる間に残り9発になった」
「1発足りないけど、行くか」

 僕とジャンヌは敵の射撃が止んだのを確認し、塹壕から敵陣と逆方向に走り出した。
 前方に林が見えたのでその中に身を隠す。
 林の中をしばらく進むと、僕たちの前に待ち伏せした敵兵2人が現れた。
 僕とジャンヌは弾の残数を気にしながらも、なんとか敵兵1人を射撃した。

 敵は残り1人。弾の残数は2発だ。
 僕は狙いを付けて敵兵を撃ったが、残念ながら弾は敵から外れた。

 残りの銃弾は1発。
 僕はジャンヌの質問を思い出した。

 ― 最後の銃弾をどう使う派?

 困ったな・・・


 ***

 その後、僕は僕が経験した20歳までのドレークについて、今のドレークに語った。20歳の誕生日に女性に不注意から刺されてしまい、死んだと思っていたことも伝えた。

「あの時はやばかったと思う。俺の記憶は病院のベッドで目を覚ましたところからだ。たまたま通りがかった隣の親父さんに助けられたらしい」
「ベンさんですか?」
「そうだ。よく知ってるな。というか、俺だったら知ってるか・・・」

 ドレークは徐々に僕が昔ドレークだったことを信じ始めたようだ。
 僕は当時の恋人について聞いてみた。

「そう言えば、エミリとはどうなったのですか?」
「エミリとは別れたよ。俺は記憶のないままドレークになったから、エミリとの思い出はない。それにエミリからすれば、恋人のドレークはどこかに行ってしまったからな」
「そうですか。まあ、そういうこともありますね」

 かつての恋人との思い出を思い出しながら僕は感傷に浸る。
 僕は更にドレークに質問する。

「ここからは僕特有の事象かもしれないけど・・・」
「なんだい?」
「実は、前世はこれだけじゃないんだ」
「お前もか?」
「お前もって、あなたもアランだった?」
「ああ、19年前までな。正確に言うと、20歳から40歳の誕生日までだ」
「へー、じゃあ僕たちは20年ごとに入れ替わってるんだ。僕もドレークとアランだった」
「みたいだな」
「アランのことで聞きたいことがあって・・・」
「なんだ?」
「二十歳の誕生日の日、僕は誰に刺されたのか知らないんだ。犯人が誰か知ってますか?」
「え? メアリーだよ。刺した後、血が大量に出てるのに驚いて救急車を呼んだんだ。俺は病院のベッドで記憶がないまま目覚めた」
「そうですか。ずっと誰が犯人か分からなかったんです。犯人はメアリーでしたか・・・」

 ― やっぱりメアリーだったか!

 僕は長年の謎が解けて満足していた。
 その一方、ドレークは僕を睨んでいるような気がする。

「俺は2回とも死にかけた状態で目覚めてるんだぞ。原因くらい教えろよ。何が原因で刺されたんだ?」
「原因ですか? ここからは僕の推測ですが・・・、きっと僕の浮気ですね。まあ、僕すごいモテるんです」
「そこ、威張るところじゃねーよ。お前のせいで、俺は死にかけたところから人生がスタートしてるんだ」
「ごめん。ごめん。悪気はないんだ。僕の前世のことを悪く言わないでよ」

 僕とドレークの状況はここまで酷似している。
 もしかしたら、あの夢のことも知っているかもしれない。

「実はもう一つあるんだ」
「なんだ?」
「夢を見ないかな?」
「ああ、見る。大体は戦場にいる」
「僕は夢の中で仲間と一緒に敵と戦っている。その夢の中で僕はマルクと呼ばれている」
「え? お前がマルクか? 俺はダニエルだ」
「ダニエルってマリアと婚約してた?」
「そうだな。お前だって、ジャンヌと付き合ってたじゃないか」
「秘密にしてたんだけどな。知ってたの?」
「当たり前だ!」

 僕はドレークに一つの提案をした。
「アランに会いに行ってみないか?」
「そう言うと思ってたよ。いいよ」
「場所は分かる?」
「ああ。俺はアランとして40歳まで実家のホテルで働いてた。今もそこにいると思う」

 こうして僕とドレークはアランを探す旅に出た。