会合から数日後、美藤家は異能を剥奪され没落した。
 帝都に構えていた屋敷や一時的に住んでいた別荘も売却されることが決定した。
 当主の蓮太郎や妻の透緒子はここから離れた遠い地へ移り住むことになり娘の未都は奉公へ出ることになった。
 行き先は帝都から少し離れた町にある異能持ちの名家。
 そこには燈夜が信頼する異能者が住んでおり未都を奉公させることと監視役を命じた。
 燈夜に助けられた過去をもつ奉公先の人々は快く引き受け、花に未都が接触しないよう尽力すると伝えた。
 花が異能を持っていたことは風の噂で透緒子達の耳にも入っている。
 はっきりと統御の異能だとは分かっていないが未都の異能、記憶の消去よりも強力なものだということは分かったようだ。
 「まさかあの子が異能をもっていたなんて……!」
 蓮太郎から話を聞いた透緒子が顔を青ざめさせ膝から崩れ落ちる。
 「でも異能は通常、物心がつく歳に目覚めるはず。どうして今……」
 「知らないわよ!貴之さんだって何も言わなかったもの。きっと偶然の産物。もっと早くに目覚めていれば美藤家はさらに権威が強くなったのに!」
 悔しそうに顔を歪める透緒子。
 そんな彼女に傍で話を聞いていた未都は声をかけるのもはばかれる。
 透緒子は金や権力しか興味がない。
 貴之はもし花の髪色や異能について話してしまったら悪用してしまうだろうと危惧していたのだ。
 あえて一連の出来事は伝えずにいたのは誰も知らない。
 「どうにかして連れ戻せないかしら」
 まだ懲りていないのか透緒子は花が再び美藤家に戻らせることが出来ないか視線を彷徨わせ思案している。
 「辞めるんだ。今回の罰は花が止めてくれたから牢獄行きにならずに済んだ。しかし次は分からないぞ。それは未都、お前も同じだ」
 「……ええ」
 流石に透緒子も牢獄だけは嫌なようで諦めたように返事をし、未都も渋々頷いたのだった。