ギシ、とベットのスプリングが軋む。

真っ暗な部屋の中、唯一の灯りは間接照明だけだった。


少し荒くなったふたつの呼吸音が木霊する。合わさった素肌は、茹だるような熱を宿していた。



「羽菜」


大きな手がするりと頬を撫で上げる。そんな些細な刺激ですら身体を震わせてしまう私に、愛しい人は暗闇の中でやさしく微笑んだ。

汗ばんだその身体にしがみつくように抱き着く。

私に触れるその手も、唇も、昔と変わらず痛いくらいに優しくて、扇情的だ。


変わってしまったものと変わらなかったもの。
数えてみたら、一体どちらのほうが多いんだろう。

今でもふと、たまにそんな事を思ってしまう時がある。



「すぐ涙目になるよな」


呟くようにそう言った唇が目尻にキスを落とす。

こうして肌を重ねるたびに私にはあなたしか居ないんだと、つよく、実感する。



忘れられるわけが、なかった。

理仁は出会った時から唯一 私を照らしてくれる、光のような人だった。


私の道標は、紛れもなく彼だと思う。
この人と一緒にいると、きっと私は正しく、綺麗で在れる。

望ましい未来に、きっと辿り着ける。




「りひと」

「…ん?」

「……すき」



そう口にした瞬間、目からポロリと涙がこぼれ落ちる。

それを拭うようにまた唇を押し付け、私に覆いかぶさって熱い息を吐き出す理仁を、私はつよく抱き締めた。




理仁。


あなたは、私の唯一の光だ。