みんなで話し合った結果、チェーン店にもなっている大きな居酒屋で飲むことに決まった。

さすがチェーン店というだけあって、予約無しの団体でもすんなりと席に着くことが出来た。


すぐにそれぞれのドリンクやら料理やらを注文して、今の自分たちの近状を報告したり、時折懐かしい思い出話に花を咲かせたり。

そうこうしているうちにあっという間に2時間が経っていた。


ずっと緊張していたし気を張っていたけれど、隣に座っている理仁が逐一 私を気遣って、話を振ってくれたり料理を取り分けてくれたおかげで、想像していたよりもずっと気楽に過ごせられたと思う。


「この後どうする?」

「どっかもう一件行きてえよなあ」


そろそろ此処を出る雰囲気になりつつあった時、隣の理仁が「トイレ」と呟き、席を立つ。私も慌てて立ち上がり「私も行く」と、その背中に続いた。



「気まずくねえ?」


トイレへ向かっている途中、首だけで私を振り返りそう尋ねてきた理仁に笑顔で首を横に振った。


「んーん、平気」

「本当かよ」

「本当だよ。最初はちょっと緊張したけど、部活での理仁の話とか聞いてると楽しいし」

「お前、揶揄うなよ」

「えぇ、揶揄ってないよ?」


正直な感想を述べただけで本当に揶揄うつもりはなかったのに、少し前を歩く理仁は不服そうに目を細め「あーそう」と素っ気ない声を返した。


「俺、先にタバコ吸ってくるわ」


ここの角を曲がればトイレに着くというところで理仁は出口の方を指さしてそう告げる。「ん。分かった」と頷いて、出口に向かう姿にヒラヒラと手を振った。


トイレで用を足し、一応持ってきていたカバンの中から化粧ポーチを取り出し、少しよれたメイクを直す。

数分でトイレを後にし、廊下まで出る。辺りをキョロキョロと見渡してみるも、さすがにまだ理仁の姿はなかった。まだタバコを吸っている途中なのかもしれない。