眠い、眠くてたまらない。今日も残業かな。出荷量、少なかったらいいな。たくさん並んだ洋服を眺め、ロッカールームに向かう。
 朝帰ったばかりの職場にもう来ている不思議。こんな毎日だから、曜日の感覚がなくなる。こういうのって労働基準法にふれたりしないのか。よくわからないけど働き過ぎじゃないのか。
 働き方改革とかの話はあるけど、うまくいっているのか。正直疑問だ。
 裕は大欠伸をして、あたりを気にする。大丈夫、誰も見ていない。
 ああ眠い。
 それにしても寒いな。吐く息が真っ白だ。ずっと外にいたら完全に凍死するな。極力外には出たくない。

「おはよう」
「おはよう」

 同僚の梅村に手を上げ挨拶を交わす。
 夕方での『おはよう』の挨拶もだいぶ慣れた。今日も仕事が始まる。頑張って早く終わらせよう。
 入荷チェックに出荷チェック。チェックの毎日だ。洋服の搬出入チェックも正直面倒だ。
 数量チェック中に立って寝てしまいそうだ。気をつけなきゃ。
 そうえいば、この間の毛皮のコートには度肝を抜かれた。一千万円だぞ。凄過ぎだろう。誰がどう考えても場違いだ。ここはそこまでの厳重な管理が行き届いていない。盗難になったらどうする。
 思い出しただけでも震えがくる。無事、配送できたことに感謝だ。
 さてと、仕事、仕事。
 なんだろう。誰もいない構内って怖いな。静か過ぎる。

「淵沢、ちょっと(から)のコンテナを確認してきてくれ」
「あっ、はい」

 柿本(かきもと)主任か。びっくりした。
 空コンか。ブルッと身体を震わせ、外へ出たところで「危ない」との声が飛んできた。
 えっ、フォークリフト。待て、来るな。こっちに来るな。そうだ、逃げなきゃ。

『死ぬ、死ぬ』
「うわわーーー」