「ここは元々母上の作った庭園でね、オレンジの薔薇はすごく珍しいんだけど、こんなに多く咲いたんだ」

 確かにオレンジの薔薇は見たことがありません。

「よく父上と母上はここでお茶をして楽しんでいたよ。結婚記念日には毎年ここでディナーをしていてね、素敵だなって思った」

 それは素敵です……。お母さまに一度でいいからお会いしてみたかったな……。

「あの蝶の髪飾りあるだろう?」
「(こく)」
「あれは父が母に贈ったものらしくてね。母に聞いたら昔結婚していない時にプレゼントで渡されたって」

 では、お父さまがお母さまのことを先に好きだったのでしょうか。
 お兄さまも同じことをどうやら思ったらしく、お母さまに聞いたのだそう。
 そしたら……。

「『実はね、お父さまは覚えていないけれど、小さな頃にすでに会っていたのよ、私たち。昔からお母さんはお父さまのこっそり好きだったの。内緒よ?』って」
「(まあっ!)」

 お母さまのほうが先に好きだったんですね!
 嬉しそうに、楽しそうに語るお兄さま。本当にお二人のことが好きなことが伝わってきます。