「ローゼもだいぶ読み書きができるようになったね。それにマナーもすごくよくできてるってエリザベート先生から聞いたよ」

 そうだったんですね、そんな風に言っていただけると嬉しいです。
 たぶん皆さんの教え方がすごいおかげですね。

「ローゼ、動かないで」
「(え?)」

 私はお兄さまの言葉通り固まったように身体を止めると、視線だけお兄さまに注ぎます。
 すると、お兄さまの顔がどんどんどんどん近くに来ます。
 え、お、お兄さまっ?!
 視界の中で大きくなっていくお兄さま。
 距離はどんどん近くなってあっという間にすぐそばに。

 私は思わず反射的に目をつぶってしまいました。
 すると唇の近くに何か柔らかいものが触れた感覚があって、びっくりして今度は目を開けました。

「ほら、クリームがついてる」

 お兄さまはご自分の指についたクリームを見せて、それをぺろりとなめました。

「──っ!!!!」

 キスされたのかと思った……。

 なんて恥ずかしくて声が出ても言えませんが、なんだか私ばかりドキドキさせられているような気がして、少しお兄さまが意地悪に思いました──