「それにあの髪飾りって確か亡くなった、アデリナ様の形見のお品でしょう? なんであんな娘なんかに」

 そんな言葉が聞こえてきて、私は少し後ずさってしまいます。
 やはり、私の養子入りは良く思われていないのですね。
 お父さまに言ってご迷惑にならないように早くに下がらせていただかないと……。

「我が妹を中傷するのはおやめいただきたい。母の形見を彼女につけてもらったのは私の意向です。ご意見があるのなら私が承ります」

 私をかばうように前に出てお話をされるお兄さま。
 お兄さまの言葉に皆様ばつが悪そうに下を向かれます。

「父が娘にすると決め、そして私もそれに賛成しました。我が妹は努力家でこの家に相応しい人間です。これ以上愚弄するなら、ヴィルフェルト家を敵に回すと思ってください」
「うぐっ!」

 皆様は気まずくなったのか、「申し訳ございません」と謝ってくださいました。
 振り返ったお兄さまは私に向かって微笑むと、手を引いてその場から連れ出してくれました。

 あ、なんだかとても綺麗な方がいらっしゃいます。
 会場から出ようとしたときに、私はふとその方が気になりました。