すると、頭を上げた私の視界は何か真っ暗になりました。

「──っ!!!!」

 しばらくたって私がラルスさまに抱きしめられていることに気づきました。
 どうしてかわからず私はおどおどと視点をずらしながら、ラルスさまの腕の中で動けずにいます。
 あ、もしかしてこれはあまりに私の動きがひどすぎて「やめろ」という合図でしょうか。
 なんて思っていたときに、ラルスさまが私の頭の上から声をかけました。

「なんてことをするんだい、ローゼマリー」

 ああ、やはりダメだったのですね。

「そんな心のこもったカーテシーを見せられたら、思わず感情が高ぶってしまう」
「(え……?)」
「きっと君のことだからさっきまで来月の社交界のことを気負いすぎて練習していたのだろう?」

 なんてことでしょう、ラルスさまには全てバレてしまっています。
 ラルスさまはゆっくりと私を解放して言いました。

「こんな可愛いカーテシー、他の男に見せないで」

 それは社交界に行く以上無理なのではないでしょうか。