ピピピーーピピピーー


「んーん、、、さい、、るさい、、うるさい!!」

少し遠くのミニテーブルに置かれたスマホを乱暴に操作し、うるさい音を制裁する。


そしてまたベッドに戻る。


再び夢の世界へもどろうとするが、それも叶わずスマホは、5分後に追撃を与えてくる。

小さくため息をつき体を起こし、窓を開ける。


眩しい光が私を包む。


カレンダーを見ると今日は高校の入学式だった。


思い腰をあげ学校へ向かう支度を始める。


髪の毛を結び、新しい制服にそでを通し、ご飯を食べる。


ばれない程度にナチュラルなメイクをする。


この支度は何日か前からずっと習慣付けのためにやってたので嫌でもからだが動いた。


すると、あっという間に家を出る時間になった。


「いってきます」
と家族に声をかけ学校へ向かう。


高校は、近所にある最寄りのところを選んだ。


交友関係を改めて作る必要もなく、学校の総合的な学力も高くなく、何より、自分の一番好きな道をとおって学校へ行けるというのが一番の決めてだった。


桜が半分ほど散り、桜の絨毯が目の前に広がっている。


綺麗だ。


しばらく歩くと、
「果夏!!」
振り返ると中学からの友達、咲希が、にっ!と笑って立っていた。


彼女は、私が見ても、いや、誰が見ても物凄くかわいい女の子だった。


雰囲気、顔だけでなく仕草や持ち物までが、かわいいに包まれている彼女はメイクに興味のなかった私に高校生にもなってメイクできませんはヤバい!と言ってメイクを教えてくれた。


とにかく彼女は自分とは正反対の女の子なのだ。


「おはよっ!!」


「おはよう」


「ひっさしぶりぃ!この前、ごめんね私が課題終わってなかったばっかりに遊ぶ予定飛ばしちゃって、、」


「ううん、平気だよ。だって、また今度映画行こうって行ってくれたじゃん、気にしないで」


「ありがとおぉぉ!果夏様ぁぁ。。」


いつもの日常が戻ってきたようだった。


体感1、2分でも、実時間では、15分程度歩くと学校に到着した。


「とうちゃーく!!」


「咲希はしゃぎすぎだよ」


「だって、花のJKだよ!はしゃぎもするよ!」


田舎の学校の生徒数は少ない。


「やったぁ!三久っ!またおなじクラスだね!」


「クラス一個しかないじゃん」


「そーだけど、なんか、一緒のクラスだね!って言えるの嬉しいじゃん?」


そんなもんなのだろうか、私には良くわからなかった。


ガラリと戸を開け回りを見渡す。


ほとんどが中学校から見慣れた顔で、安堵する。


咲希は、私のもとをはなれ他の人たちのもとへ喋りに行く久しぶりー!とか、春休み何してた?とかだろうか。


彼女は容姿だけでなく友達にも恵まれていていいなと小さな嫉妬心を浮かべながら頭のなかでブンブンと振り払った。


正直学校は好きではない。


学校にいるほんの数時間で、成績をつけられ自分達の技量を図られる。
その仕組みがまず好きではないし、要領の良い人を見たときに自分を比べてしまって悲観的になるのがいやだからだ。


そんなことはどうでもいい。


自分の席を探すそんな自分の目に入って来たるのは自分の名前よりも先に、【花園虹果】の文字。


どこかで見たことがある気がする。


そう思ったとたん脳裏に今朝の夢の内容が駆け巡る。


彼だ。


彼が生きていること、また会えること、そしてこの町にいること。
素直に嬉しかった。


彼の席である一番後ろの席を見る。


彼はまだ来ていない。


そして、本来の目的が自分の席の確認であることを思い出し慌てて確認すると一番後ろの窓際の席を記していた。


人との交流をできるだけ少なくするには丁度良い席だ。

自席に着くと本を広げる。


べっに本が好きなわけではない。


ボーッとしたいときや、友達のほとんどいない自分の学校での生き方として、本を読むことが人から話しかけられにくい方法第一位だったのでこの本をずっと広げ続けている。


何回も読んでいるため表紙はおろか、ページもぼろぼろなものだった。


休み明けということもあり、この学校特有の雰囲気を忘れていた自分がいた。


そんな自分でも、もう今は一刻も早く帰りたいと感じている。


でも今は、彼に会える、もう一度彼と話したいという気持ちが私の心の支えとなっていた。


彼が教室へ入ってくる。


夢で見た通りだった。

成長したことで幼さがなくなりより美しさが強調された彼を見ると自分とは真逆の世界で生きていることを感じさせられ少し落ち込む。


彼のことを見れたこと、そして本人確認をするという目的を果たせたので本に目を落とす。


すると、
「果夏さん?」
上から声が降ってくる。


首を少し動かして見上げる形をとると、目の前に驚いたような彼の姿がうつる。


覚えててくれたことを感じさせる声音から、喜びが溢れそうだった。


「うん、そうだよ。」
あのときに比べそっけなく返してしまう自分に嫌気がさすが、どのテンション感で返すべきかわからず、あたふたしていた。


「あ、、あのとき、、ありがとうございました!今年、よろしくね!」


「よろしく」


そう返すと、目線を下に戻した。


今日のそれ以降の記憶はほぼない。